処方薬の間違い(2015/01/15)
重大な医療事故は予期せぬ形で、そしてまた過去の教訓が生かされずに全く同じような事故が起きてしまう。先日報道された「筋弛緩剤を誤って投与、患者死亡 大阪府立の医療機関」の事故も過去の事例をそのままなぞるようなものである。
大阪府立急性期・総合医療センターは12月31日、入院中の60代の男性患者に誤って筋弛緩剤の点滴を投与し、男性が死亡したと発表した。医師から抗生物質の処方を指示された薬剤師が薬剤を取り違え、点滴前に確認した看護師2人も気づかなかったという。センターは遺族に謝罪し、府警に届けたという。
センターによると、男性患者は抗がん剤治療のために約2週間入院。発熱の症状が出たため29日、主治医が抗生物質「マキシピーム」の点滴を指示したところ、女性薬剤師が薬剤の入った棚から誤って筋弛緩剤「マスキュレート」を取り出し病棟に送った。
二つの薬剤は別の棚で保管されており、薬剤師は男性への点滴が始まった約2時間後、別の患者用に「マキシピーム」を取りだそうとして取り違えに気づいたが、男性はすでに心肺停止状態だったという。
薬剤師は院内の調査に対し、「抗生物質だと思って筋弛緩剤を出してしまった」、看護師らは「その患者の薬だと思った」と説明しているという。
吉岡敏治院長は31日会見し、「あってはならないことで患者やご家族に心からおわび申し上げます」と話した(朝日新聞から抜粋)
薬剤の取り違えは、過去にも重大な事故に直結したり、また幸いにも未然に防止できた事故もあった。先日の当院の医療安全対策委員会でも、「持参薬のカルマバゼピン錠(テグレトール)を処方するつもりでいたが、オーダーする際にカルバまで入力し、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム錠(アドナ)が候補としてでてきて、これを間違って処方してしまった」という事例が記録されていた。幸いにも大事には至らなかったが、電子カルテや後発品の増加でリスクはより高まってきている。
私が医療安全の講演よく紹介してきたのが、次のような事例で、実際の話である。
外来処方でアマリ-ル3錠の処方箋を受け取った薬剤師が、「アマリール3錠でいいのですね」と処方した医師に電話したら、「いいです」という返事だった。患者さんは家に帰って、「いつもの薬と違う」と思って病院にその薬を持って来て、「事なきを得た」。よくい医療安全の世界では「余計な一言」が事故防止につながることがある。もし薬剤師が「血糖降下剤のアマリール3錠で・・・」と言えば、医師は本態性高血圧症に使われる「アルマール」と血糖降下剤の「アマリール」の間違いに気づいたはずである。医師に変な遠慮があったのかどうかは知らないが、薬剤師や看護師も、医師のうっかりミスを防ぐためには、遠慮することなく指摘してあげるべきである。この事例では、患者さんの賢明な判断で未然に事故を防止できたわけで、医療安全はみんなの協力があって初めて達成できるのである。
なおアルマールに関しては「このたび弊社(大日本住友)は、アルマール錠につきまして、名称類似に関連した医療事故防止対策の一環として、アロチノール錠への販売名の変更を行いました」という通知があった。賢明な措置である。
大阪府立急性期・総合医療センターは12月31日、入院中の60代の男性患者に誤って筋弛緩剤の点滴を投与し、男性が死亡したと発表した。医師から抗生物質の処方を指示された薬剤師が薬剤を取り違え、点滴前に確認した看護師2人も気づかなかったという。センターは遺族に謝罪し、府警に届けたという。
センターによると、男性患者は抗がん剤治療のために約2週間入院。発熱の症状が出たため29日、主治医が抗生物質「マキシピーム」の点滴を指示したところ、女性薬剤師が薬剤の入った棚から誤って筋弛緩剤「マスキュレート」を取り出し病棟に送った。
二つの薬剤は別の棚で保管されており、薬剤師は男性への点滴が始まった約2時間後、別の患者用に「マキシピーム」を取りだそうとして取り違えに気づいたが、男性はすでに心肺停止状態だったという。
薬剤師は院内の調査に対し、「抗生物質だと思って筋弛緩剤を出してしまった」、看護師らは「その患者の薬だと思った」と説明しているという。
吉岡敏治院長は31日会見し、「あってはならないことで患者やご家族に心からおわび申し上げます」と話した(朝日新聞から抜粋)
薬剤の取り違えは、過去にも重大な事故に直結したり、また幸いにも未然に防止できた事故もあった。先日の当院の医療安全対策委員会でも、「持参薬のカルマバゼピン錠(テグレトール)を処方するつもりでいたが、オーダーする際にカルバまで入力し、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム錠(アドナ)が候補としてでてきて、これを間違って処方してしまった」という事例が記録されていた。幸いにも大事には至らなかったが、電子カルテや後発品の増加でリスクはより高まってきている。
私が医療安全の講演よく紹介してきたのが、次のような事例で、実際の話である。
外来処方でアマリ-ル3錠の処方箋を受け取った薬剤師が、「アマリール3錠でいいのですね」と処方した医師に電話したら、「いいです」という返事だった。患者さんは家に帰って、「いつもの薬と違う」と思って病院にその薬を持って来て、「事なきを得た」。よくい医療安全の世界では「余計な一言」が事故防止につながることがある。もし薬剤師が「血糖降下剤のアマリール3錠で・・・」と言えば、医師は本態性高血圧症に使われる「アルマール」と血糖降下剤の「アマリール」の間違いに気づいたはずである。医師に変な遠慮があったのかどうかは知らないが、薬剤師や看護師も、医師のうっかりミスを防ぐためには、遠慮することなく指摘してあげるべきである。この事例では、患者さんの賢明な判断で未然に事故を防止できたわけで、医療安全はみんなの協力があって初めて達成できるのである。
なおアルマールに関しては「このたび弊社(大日本住友)は、アルマール錠につきまして、名称類似に関連した医療事故防止対策の一環として、アロチノール錠への販売名の変更を行いました」という通知があった。賢明な措置である。