Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

徳之島巡回医療相談(後)(2015/02/04) 

15時から会場の一画で、個別相談となり、あらかじめ予約のあった4件の相談を受けた。  最初の方は30代後半の女性で、実姉と一緒にみえられた。姉は20歳代でSLEの診断を受け、現在もステロイドで治療中、ご本人は数年前から関節リュウマチのような症状があり、地元の病院に月に一度診療に来られる先生に診てもらっているが、先回検査したら、その結果次第でSLEかどうかがわかると言われた。夫と飲食店を営んでおり、小さな子供が二人いる。「どの程度働いていいのか、相談したい」ということだったが、状況を考えるとなかなか難しい問題である。
 二人目は60歳代のパーキンソン病の男性である。20歳代の娘さんが南九州病院の重症児病棟に長期入院していることもあって、「先生のことは以前よりよく知っており、先生の書かれたパーキンソン病の本も買って読んでいる」という。この娘さん、一歳を越えたころにお婆ちゃんの家で、ちょっと目を離したすきに風呂で溺れてしまったのだという。大変なストレスがパーキンソン病の引き金になることもあるのだろうかと思うことだった。
 三人目の方は70歳代後半のご夫妻で、奥さんの相談である。短歌などされてさばけた女性だったが、2,3年前から自分の云いたいことが言えなくなり、知的障害が進行しつつあるようである。なんらかの脳の変性疾患が疑われるが、検査所見などもわからないので確定はできない。進行はさほど早くはないようなので、「あんまり心配しないで、できることを精一杯して余生を楽しんでください」というにとどめた。
 最後の80歳近くの男性は、特発性拡張型心筋症と診断されている。数年前からインスリンの注射をしている。窓の向こうを指さしながら、「あの山の最も高いところに牛舎があり、今6頭の種牛を飼っています。今、子牛の値がいいので楽しいです。先日は船にのって海に出かけて魚を突こうと潜ったら息苦しくなってしまいました。先生にこの事を話したら、「死ぬつもりか」と怒られました。糖尿病があるので、あの山の牛舎まで毎朝歩くんですが、途中で息苦しくなります。安静にした方がいいのか、歩いたほうがいいのか、教えてください」と、無謀で明るい質問である。「お好きなようにされたら。きついと思ったら止めたらいいわけで」と、こちらもいい加減な答え方をする。「先生、また夏でも遊びに来て下さい。突いた魚をご馳走しますから」と最後まで朗らかである。
 帰りは加治さんに空港まで送ってもらい、途中でウンブキ(陸の海)という鍾乳洞でできた海底洞窟を案内してもらった。
 定刻の18時発の飛行機で、19時に鹿児島空港に着き、一日がかりの巡回医療相談は無事に終えることができた、と思った。
 ところがである。
 風邪気味だったこともあり、徳之島に行く飛行機の中で両方の耳の閉塞感を感じていたが、会場で講演中も自分の声が耳に響いていた。帰りの飛行機の中で左の耳は大きな音と共に、「開通」したように思えた。今までも飛行機に乗ったときに閉塞感を感じることは多々あったが、翌朝まで耳が聞こえにくくなるということはなかった。20日も一日中、両耳の閉塞感と難聴は続いた。いわゆる航空機中耳炎(滲出性中耳炎)だろうと自己診断し様子をみていたが、数日してよくなりつつある。