Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

蛇にまつわる話(後)(2015/03/05) 

そんなわけで、「ヘビ物語」を書くことにした。
 私が小学4年生まで住んでいた田舎の家の門の横には椎の大木があり、その幹のほこらのように窪んだ所に、大きいな青大将がよく住みついていた。また家の天井の廂から大きな青大将がドスンと落ちてきたこともあった、などと書けば、これだけでも相当田舎に住んでいたことがよく分かる。ヘビに対する恐怖心は、この頃の気持ち悪さがトラウマになっているのかも知れない。夜道にハブに遭遇すれば一目散に逃げるか、凍ってしまって立ちすくんでしまうだろう。先日、私の住むマンションの一階の郵便物受け付近で体長1メートルほどのヘビがいたそうで、鹿児島市の街中でもヘビは棲息しているのである。
 日経新聞に掲載されていた「人はなぜヘビを怖がる」によると、人がヘビを怖がるのが本能なのか、後天的に学習したものか論争が続いていたが、冒頭にも触れたように本能説が有力になってきたというのである。
 心理学者の間では1980年代から、実験室で生まれてヘビと遭遇した経験のないサルはヘビを恐れないが、このサルに野生ザルがヘビに怖じけづく光景を見せると途端にヘビを怖がり出すという。このため学習説が有力だった。
 ところが実験室生まれのサルに、あらかじめ「間違い探し」を覚え込ませておき、花の写真の間に一枚だけヘビを混ぜると、サルは逆の組み合わせ(ヘビのなかにサル)より素早くヘビを見つけるという。すなわち、「草むらに潜むヘビを、サルが素早く探し出せることを示している」。これは人を対象にした実験でも同じで、人の脳にはヘビなどの「恐怖の対象」を無意識に素早く反応する神経回路があり、情動を担う「扁桃体」という部分が働き、危険を迅速に察知するためらしい。
 哺乳類が霊長類に進化した6万年前から一億年前、口の大きなヘビや毒ヘビの勢力が急伸、私たちの祖先はヘビと熾烈な生存競争を繰り広げ、天敵から身を守るために視覚も進化したようだ。
 にわかに信じがたいような変わった人もいるもので、このような変わった人種の気まぐれで、自分の住む環境が変わっていくことも危惧される。ひょっとすると、このマンションで見つかったヘビも、住人の誰かがペットとして飼っていたものかも知れない。
 自宅でコブラなどの毒蛇51匹を無許可で飼ったとして、警視庁保安課などは動物愛護法違反の疑いで東京都渋谷区、港湾作業員(41)を逮捕した。調べによると、同容疑者は都知事の許可を受けずに、自宅マンションで、アフリカ産コブラなどの毒蛇51匹を飼った疑い。単身者用マンションの1室にプラスチック製の飼育ケースを多数並べ、1匹ずつ入れて飼育。世界で最も毒が強いとされる全長約190センチのアフリカ産コブラ「ブラックマンバ」も含まれていた。同容疑者が同日、コブラに餌を与えようとして左手の指をかまれ、自ら119番して飼育が発覚。病院に搬送されたが、指の一部が壊死(えし)し一時意識を失う重体となり、同課は退院を待って逮捕した。(新聞記事からの要約)
 間抜けで自業自得とでも言いたいところだが、都市部のマンションなどでは、「隣の人は何する人ぞ」の世界であり、まさかこのような人が住んでいることなど想像すらできない。東京などでも温暖化が激しいし、もしこの男が公園などの草むらに毒蛇を放てば、時によると自然環境に馴染んで東京のど真ん中で繁殖しないとも限らない。本当に怖い話である。過去の二酸化炭素濃度の研究から、地球には現在よりもっと温暖化した時代があったようで、先日、六千年前の地層から全長13メートルという史上最大のヘビの化石が発見されたと報じられていた。