Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

鹿児島セイフティマネジメント研究会(中)(2015/07/07) 

さて当日は11時から、ハンズオンセミナーとして今回から「抗がん剤投与システムの適正使用勉強会」から始まった。昨年までは「輸液・シリンジポンプの正しい使い方」のハンズオンだったが、今年は各病院で抗がん剤の使用が増えて暴露など大きな問題になっていることもあって、この課題を取り上げた。
 テルモ株式会社が資材や人員を惜しみなく投入してくれたこともあって、充実したハンズオンとなり、受講者の満足度も高かったように思われる。受講者には代表世話人の私の名前で修了証を手渡した。
 13時からは弁当を食べながら世話人会を開催し、来年は6月25日(土)に同じ自治会館で、杏林大学教授の川村治子先生に講演をお願いすることが決まった。
 14時からシンポジウムで、波多江・田畑の両先生の司会で、「現場における医療安全」というテーマで発表と討論を行った。医療現場でのリスクにかかわる問題を、鹿児島大学輸血・細胞治療部の古川先生、麻酔科でのリスクを麻酔科の今林先生、臨床検査技師の立場から鹿児島市医師会病院診療支援部の有村先生、医療安全管理者を代表して今給黎総合病院のQCセンター、千田先生にそれぞれの立場から発表していただいた。
 16時からは私が司会して、荒井俊行先生(弁護士、看護事故の病院側弁護を担当していただいている)に「医療事故発生時の対応について」というタイトルで講演して頂いた。世の中には凄い能力のある人もいるもので、先生は東大の理学部物理学科を卒業された翌年の平成6年に司法試験に合格されている。後の懇親会でその経緯を詳しく聞くと、舟橋市のお生まれで県立千葉高校在学中から将来は司法関係の仕事に就きたいと思っておられたそうである。ところが物理が好きだったので、とりあえず理論物理学を学ぶことにした。司法試験は1,2ヶ月集中的に勉強すれば受かるだろうと思って、大学4年の卒業の年に、2月ごろから司法関係の書物を勉強して5月の司法試験に臨んだ。5月の一次試験にはもくろみ通り合格したが、7月の二次で落ちてしまった。「やはり勉強しなければ合格できないのだな」と悟って、一年間勉強して翌年全て合格したという。アメリカのロースクールも修了され、ニューヨーク州の弁護士登録もされている。現在45歳ということだったが、話しぶりも穏やかで謙虚で、世の中にはこのようなタイプの弁護士もおられるのだと驚いた。この荒井先生を推薦した世話人の植田さん(吉田温泉病院看護部長)は講演の後、「あなたは殊勲者ですと、出席したある医師に言われました」とうれしそうに話されていた。
 さてその講演の方法と内容であるが、まず講演内容の前に白板を使ってやる講演スタイルについて触れたい。最近の講演では、多くはパワーポイントを使うことが多いが、この方法は便利であるし映像的な内容ではこの方法しかないと思う。スライドなど全く使わずに講演する人は、作家のような職業の人で、聴衆を飽きさせずにずっと惹きつけて話のできる人もいる。五木寛之さんなどがその一人である。ただ人によっては内容が散漫になったり、主旨から大きく外れてしまうこともある。荒井先生の場合、「白板を使う」スタイルは、結果として成功していると思う。講演と言うより講義(教育)で、小学生に話すように何度も振り返りながら話を進めていく。あらかじめ渡された資料には箇条書きで要点を少し書いているだけなので、聞く人は必然的に自らメモルしかない。ただ欠点として、300人近く集まった大講堂では後ろの人は読み難いのじゃないかと心配した。そこでテルモの担当の女性が涙ぐましい苦労をしてくれた。「天は三物を与えなかったのだなあ」とひそかに嬉しくなったが、荒井先生の字体は白板に書くには判りやすく合理的なものだが、決して美しくはなかった。当初はマジックの字が薄くて読みにくかったが、太いマジックに替えてもらい、白板を蛍光灯で明るく照らしだして、それをカメラで撮って拡大してスクリーン上に映写して、やっと後ろからでも読めるようになった。