患者さんの気持ちになって(前)(2015/09/04)
日本内科学会雑誌の座談会「総合診療医とParkinson病」(2015年8月号)の中で、司会も務めた野元正弘先生(愛媛大学医学部教授)が次のように語っていた。
「かかりつけ医の先生方に治療をお願いするときには、先生方が患者さんの訴えに堪えられないために引き受けて頂けないということを時々経験されるかと思います」、そして「患者さんの訴えが多いということ自体は、必ずしも状態の悪いことではないと認識していただき、まず訴え一つひとつの調整を行うということを最優先していただいて、その上でお薬で対応すべき訴えかを判断していただくというのが、パーキンソン病を診ていただくうえでのコツではないか・・・」と話されているが、けだし名言だと思った。
パーキンソン病の患者さんの訴えは、特に病期が長くなるにつれて増えてくるし、多岐にわたる場合が多い。もともと几帳面な性格の人が多いこともあって、さまざまな症状を訴えてくる。残念ながら現在治癒に至る治療法はないわけで、症状をできるだけ快適なレベルにコントロールしていくしかないのが現状である。おまけに日内変動や月単位での症状の変動に悩まされ、患者も戸惑ってしまう。
「そのような病気なんだ」と理解して開き直ってもらうことが大切であるが、自分が元気な頃のことがどうしても忘れられない。一つ一つの訴えに向き合っていくのは、正直にいうと時にはうんざりすることもある。ただそれが神経内科医としてのプロとしての仕事であり、できるだけ丁寧に理解してもらえるように心がけるしかない。まさに「患者さんとのコミュニケーション」技術が試される場面である。
先日、難病相談支援センターでの「難病相談」で、次のような二件の相談を受けた。
最初の事例は60歳代後半の女性の相談で、現在パーキンソン病という診断を受けており、その女性の夫と娘さんが来られた。本人は現在入院中のために来られなかった。
数年前からある総合病院の神経内科で治療を受けてていたのだが、最近幻覚や妄想(誰かいる。女がいる、体を触られる)の症状が強く、大声で叫ぶこともある。しばらく話を聞いてやると落ち着くが、その後も独り言を言ったりする。夫は夜は眠れない。朝起きて薬を飲むと、食事や掃除などの家事もできるようになる。
そこで、その病院でもっとも信頼のおけるベテランの神経内科の先生に診てもらった。すると一度だけ診察しただけで、「精神症状がパーキンソン病からくるものとは違うようですので、精神科の病院を紹介します」と言われて、ある病院を紹介されたという。
この病院は患者さんの居住している地域にあって、昔から○○脳病院と呼ばれている。「家内は入院してからというもの、ショックで食事をほとんど口にしていません。二人部屋ですが、周りは意味不明な大声をあげたりする患者さんばかりで、どうしてもなじめないようです。おまけにリハビリすることもないので、部屋の中でじっとしているので固まってきています。これでは悪くなるばかりですので、どこかほかの病院を紹介していただけないでしょうか」というものである。家に連れて帰りたいが、私も娘も働いているので四六時中介護することはできないという。
「かかりつけ医の先生方に治療をお願いするときには、先生方が患者さんの訴えに堪えられないために引き受けて頂けないということを時々経験されるかと思います」、そして「患者さんの訴えが多いということ自体は、必ずしも状態の悪いことではないと認識していただき、まず訴え一つひとつの調整を行うということを最優先していただいて、その上でお薬で対応すべき訴えかを判断していただくというのが、パーキンソン病を診ていただくうえでのコツではないか・・・」と話されているが、けだし名言だと思った。
パーキンソン病の患者さんの訴えは、特に病期が長くなるにつれて増えてくるし、多岐にわたる場合が多い。もともと几帳面な性格の人が多いこともあって、さまざまな症状を訴えてくる。残念ながら現在治癒に至る治療法はないわけで、症状をできるだけ快適なレベルにコントロールしていくしかないのが現状である。おまけに日内変動や月単位での症状の変動に悩まされ、患者も戸惑ってしまう。
「そのような病気なんだ」と理解して開き直ってもらうことが大切であるが、自分が元気な頃のことがどうしても忘れられない。一つ一つの訴えに向き合っていくのは、正直にいうと時にはうんざりすることもある。ただそれが神経内科医としてのプロとしての仕事であり、できるだけ丁寧に理解してもらえるように心がけるしかない。まさに「患者さんとのコミュニケーション」技術が試される場面である。
先日、難病相談支援センターでの「難病相談」で、次のような二件の相談を受けた。
最初の事例は60歳代後半の女性の相談で、現在パーキンソン病という診断を受けており、その女性の夫と娘さんが来られた。本人は現在入院中のために来られなかった。
数年前からある総合病院の神経内科で治療を受けてていたのだが、最近幻覚や妄想(誰かいる。女がいる、体を触られる)の症状が強く、大声で叫ぶこともある。しばらく話を聞いてやると落ち着くが、その後も独り言を言ったりする。夫は夜は眠れない。朝起きて薬を飲むと、食事や掃除などの家事もできるようになる。
そこで、その病院でもっとも信頼のおけるベテランの神経内科の先生に診てもらった。すると一度だけ診察しただけで、「精神症状がパーキンソン病からくるものとは違うようですので、精神科の病院を紹介します」と言われて、ある病院を紹介されたという。
この病院は患者さんの居住している地域にあって、昔から○○脳病院と呼ばれている。「家内は入院してからというもの、ショックで食事をほとんど口にしていません。二人部屋ですが、周りは意味不明な大声をあげたりする患者さんばかりで、どうしてもなじめないようです。おまけにリハビリすることもないので、部屋の中でじっとしているので固まってきています。これでは悪くなるばかりですので、どこかほかの病院を紹介していただけないでしょうか」というものである。家に連れて帰りたいが、私も娘も働いているので四六時中介護することはできないという。
