Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

生き心地の良い町(前)(2016/04/14) 

4月9日の日経新聞「こころ」欄に、「生き心地の良い町、岡 檀(まゆみ)さんに聞く」というタイトルの記事が載っていた。一読して、組織の在り方を考える上でいろいろと示唆に富む記事であると思ったので、みなさんにも紹介したい。なお岡さんは現在、和歌山県立医科大学保健看護学部講師の職にあるが、著書に「生き心地の良い町―この自殺率の低さには理由がある」というものがある。
 岡さんの紹介する徳島県海部町は日本一自殺率の低い自治体であるが、岡さんの調査と分析から「自殺を予防する因子」が浮かび上がってくる。それはまさしく「生き心地の良い町」の条件にもつながるのである。
 まず自殺の危険を抑える要素を5つ挙げ、それぞれについて考察から始まる。
① 多様性を重視する
② 他者を人物本位で評価する
③ 主体的に社会と関わる
④ 他者に助けを求めることへの抵抗が小さい
⑤ 緩やかにつながる
岡さんの言葉から印象に残った個所をそのまま紹介する。
「排他的傾向が小さい背景には、海部町民の人を見る目の確かさがあります。相手が身内であるかよそ者であるかではなく、あくまで人物本位なのです」
「職業上の地位や年齢、学歴だけでなく、その人の問題解決能力や人柄も多面的に見て、総合的に評価するのです」
 自治体の教育長は普通では中学校の校長OBや教育行政のベテランがつくことが多いのに、この町では42歳の商工会職員を抜擢している。商店街の活性化や観光振興に腕を振るった企画力に教育再生を託したのである。
「町で出会った組織のリーダーは、要職に就く人のステレオタイプとは違っていて、単に“立派”なという形容詞に収まりきらない何かを備えている人物が多かった。こうした人を選ぶ町民の眼力にも感心しました」
「統制や均質化を避けようとするのも海部町の際立った特徴です」
「江戸時代から続く相互扶助組織の『朋輩組』では、年長者が年少者に服従を強いたりしません。朋輩組には会則はないに等しく入退会の決まりもありません」
「メンバーの均質性を高めて統制を高めて統制を強める類似組織のような閉鎖的で息苦しい集まりにはせず、開放的で風通しの良い組織としてきたのです」
「処罰によって組織を統制しない理念は『一度目はこらえたれ』という合言葉にも表れています。周囲に迷惑をかけた人を『一度目は許す』ことでやり直しの機会を与える。一時の行為だけで烙印を押すように評価を固めることを避けようとしています。烙印を恐れずに生きられる社会では、精神的肺活量がぐっと増え、深くゆっくりいきができるような気がします」