Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

高齢者向け住まい&介護(2016/06/23) 

日本病院会雑誌(5月号)に掲載された「書評」を転載します。
高齢者向け住まい&介護に備える入門ガイドブック~安心介護・住み替えを支える老後資金も!~ 評者 公益社団法人鹿児島共済会院長 福永秀敏
若いうちはそれほどでもないが、歳をとるにつれて誰しも「住まいや介護」への不安がじわじわと忍び寄ってくる。私もその一人であるが、このような不安に答えてくれる本はないものかと思っていたら、願ってもない良書が発刊された。それもコンパクト(52ページ)で廉価(550円)で、かつポイントを押さえた編集で、しかも総カラーで装丁もデザインもあか抜けしている。
発行所は、シニアに安心情報を提供する出版社「アール・シップ」。
本書では、3人のスペシャリストが、それぞれの分野で渾身の力を奮っておられる。満田将太さんは高齢者住まいアドバイザーで、新美昌也さんはライフプランに基づいた総合的なアドバイスを得意とするファイナンシャルプランナー、三好貴志男さんは相続などに関する諸問題に精通した公認会計士である。
内容は6章に分けられており、第一章が「他人事ではなくなった介護や認知症」、第二章が「よくある相談事例のパターン」、第三章が「高齢者向け住まいの種類と実情」、第四章が「高齢者向け住まいの探し方・選び方」、第五章が「介護保険制度の利用の手引」、第六章が「介護や住み替えに備えるマネープラン」で、最後におまけとして得するコラム「高齢者向け住まいへの入居と自宅の相続」から構成されている。
各章では図表をふんだんに使い、「ここがポイント!」というコーナーもある。それぞれ面白いが、私がまず注目した箇所は「要介護度区分別(入居・入所時)&月額費用区分別」の、主な高齢者向け住まいのイメージ図である。縦軸に月額費用を高(30万円超)、中(30万~15万)、低(15万~6万)の三段階に分け、横軸に要介護度(自立~要介護度5)として、自立ないし要介護度が低くて月額費用の高いところから低いところに向けて、介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、シニア向けマンション、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウス(一般型)、地域優良賃貸住宅(高齢者型)、シルバーハウジングとなっている。一方、要介護度が高くなると、月額費用の高いものから低いものに向けて、介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、ケアハウス(介護型)、介護療養型医療施設、介護療養型老人保健施設、介護老人保健施設、そして特別養護老人ホームとなる。将来自分の負担可能割合と要介護度から、大体の目安がつけられるように工夫されている。
さらに「介護への備えと高齢者向け住まい探しのフローチャート」では、「現在、日常生活において介護や支援は必要ですか?」からスタートする。A:介護(または支援)が必要で自宅での介護が可能かどうかで、「はい」と「いいえ」に分かれていく。一方、B:必要ない(その定義として、①日常生活上何の支障もないが、将来に備えたい、②起き上がりや歩行に多少の苦痛を感じて少し不安、③もの忘れや言葉が出てこないといったことも増え少し不安)を挙げ、「緊急時対応などのサービスが付いた住まいに住み替えをしたいかどうか」で、「はい、いいえ」となり、最終的には住宅系と施設系の各種住まいに辿りつく。
このように、いろいろな立場や状態を考慮しながら、わかりやすくまとめられている。この一冊で介護や高齢者の住まいに関する不安は解消されるような仕掛けになっており、ケアマネジャーなど介護の仕事に係る職種にも必携の一冊といえる。

高齢者向け住まい&介護に備える