Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

病院羅針盤(後)(2016/06/14) 

この部分には大変重要なことが書かれていると思う。救急隊員も人間であり、嫌々ながら受け取られたのでは、次には他の医療機関を選びたいと思うのが人情である。また私の後輩のクリニックの医師の言葉が耳に残っている。「泥棒を捕まえて警察に連絡したとき、その素性など詳しく聞きますか!(泥棒と患者さんを一緒にされるのは、ちょっと乱暴なたとえだと思うが)『患者さんをお願いします』と紹介されたら、四の五の言わず、まず『どうぞ』と言うのが普通でしょう」
・救急応需率は、ほぼ100%から50%以下と医療機関によるばらつきが大きい。救急車の断りは「満床、手術・処理中や専門外が理由」とされることが多いが、平日の昼間であればスタッフも多く何らかの対応ができるはずだ。救急隊からの要請を担当医師に確認せず、ほぼ「自動的に受け入れる仕組み」が構築されているのが、応需率100%の医療機関だ。今回、当院でも似たようなシステムにしていただいている。
・都会の住宅街にある病院では救急車搬送に加え、ウオークイン患者が多く、それが理由で救急車応需率が下落してしまうことも少なくない。このようなケースでは「時間外選定療養費の徴収」も検討することが有効だろう。軽症なウオークインは地域の医療機関にお任せして、自院は救急車対応に注力する。
・救急車搬送入院件数を増加させるもう一つの手段は、救急車からの入院率を向上させること。
3.  入院経路別 平均在院日数と入院診療単価
・新入院患者数を増加させるためには、救急車への対応に注力することは短期的な結果につながり、そのことが重症度の向上にもつながることだろう。ただし、中長期的には積極的に逆紹介を行い、地域と連携し紹介入院を獲得し、次の予定入院を獲得することが求められる。高齢化に伴い救急患者は増加するものと予想されるが、紹介を中心とした予定入院を獲得できるかが、急性期病院の成長のカギを握る。
・入院経路別にみると、予定入院患者は緊急入院に比べて入院診療単価が高い。これは高齢者救急入院は在院日数が長くなること、手術の実施率が低くなるからだ。高齢者で誤嚥性肺炎等が多くなれば手術実施率は低くなる。
・入院診療単価が高いことが必ずしも儲かることを意味しないが、これからの高度急性期病院は、手術につながりやすい予定入院患者の獲得に注力することが望ましい。
4.  退院支援の強化
・獲得した救急患者を早期に退院あるいは転院させるため、そして地域と密接な連携を構築し次の紹介患者を獲得するために、今回の改定で新設された退院支援加算1の届け出を早期に実現したい。ただ人員配置の要件は厳しい。
これも費用対効果を考えることが大切で、加算が人件費を上回らなければ躊躇してしまう。