病院羅針盤(前)(2016/06/13)
月刊誌「病院羅針盤(2016年6月1日)」の連載、「医療政策の方向性を踏まえた戦略的病院経営」の第三回に、井上貴裕先生(千葉大学病院企画室長、特任教授)が「7:1入院基本料を維持するため、看護必要度向上のための施策」という論説を書かれている。一読して、我々の病院の抱えている課題と全く同一であると思うので、皆さんにも紹介したい。所々に、当院(南風)との比較とコメントを勝手に挿入している。
1. 在院日数の適正化と新入院患者の獲得
・現行の重症度が本当の重症度の実態を反映していないので、改定ごとに項目の入れ替えが行われて、そのために現場の混乱を招いてきた。ただ基本的な考え方として、(特に今回の改定では)急性期医療の必要度の低い患者は早く退院、転院すべきだという意図が隠されている。
・在院日数の短縮には自ずから再考の必要があるのではないかと思う。限界もあり、DPC/PDPSにおける入院期間Ⅱを目安にした在院日数の適正化を図るべきである(予定入院については、入院期間Ⅱ以内で80%以上の退院を目指すのが望ましい。そのためにはパスの見直しを)。当院での毎月の病床管理委員会でも点検しているが、結果として効率性係数が向上し、医療機関別係数にもプラスの影響が出る。
・在院日数が短縮すれば、病床利用率が下落し、トータルの収益は減少する可能性もある(可能性というより、必至である。)。ただ在院日数の短縮は入院診療単価の向上をもたらし、一般的には平均在院日数が1日短縮すると4000円程度単価が上がる。しかし、1日早く帰すということは入院延べ患者数が減少し、1患者あたり50,000円程度の収入を失うことを意味する。当院の4月の収益減少はまさにこのためだった。二兎を追うのは厳しいことだが、激変緩和措置としては新入院患者の増加を図るに尽きる。
・そこで求められるのは新入院患者の獲得だ。特に地方都市では高齢化による人口減少という環境下で、新入院患者を獲得することは容易でないという現実がある。しかしながら新入院患者が増えれば必然的に在院日数が短くなり、結果として重症度を満たす可能性が高くなる。ここ辺りが、人口の多い都市部と地方都市の違いである。都市部の大病院では平均在院日数8日でもやっていけているが、鹿児島などでは途方もなく高いハードルに思えるのだが・・・それでも目指していくよりほかにない。
2. 救急車への対応策
・新入院患者の獲得策として、短期的に結果を出しやすいのは救急患者を獲得することだ。仮に救急車搬送患者を入院させ、心電図モニターを装着すれば、2日間ではあるがA項目3点を満たすことになる。
・救急車搬送入院患者数を長期的に獲得するには、戦略的仕組みを構築することが必要である。救急隊からの要請数は救急隊の判断によるものであり、より近い医療機関が優先されるのが一般的であるからコントロールすることは難しい。しかし救急隊も人間であり、いつでも気持ちよく受け入れてくれる医療機関に搬送したいと考えることだろう。「うちは3次救急だから」などとお高態度で、救急隊がオーバートリアージをして2次救急を搬送してきた際に怒鳴りつけたりする医師も少なくない。救急隊がオーバートリアージするのは万が一を考えてのことなのだから、ある意味では当然であり、このような態度は慎むべきだ。医師は救急救命士にとって「先生」であり、先生らしく救急患者のトリアージを教えて欲しい。救急隊は地域の救急医療を支えるパートナーであることを再認識し、いつも気持ちよい受け入れを心がけたい。
1. 在院日数の適正化と新入院患者の獲得
・現行の重症度が本当の重症度の実態を反映していないので、改定ごとに項目の入れ替えが行われて、そのために現場の混乱を招いてきた。ただ基本的な考え方として、(特に今回の改定では)急性期医療の必要度の低い患者は早く退院、転院すべきだという意図が隠されている。
・在院日数の短縮には自ずから再考の必要があるのではないかと思う。限界もあり、DPC/PDPSにおける入院期間Ⅱを目安にした在院日数の適正化を図るべきである(予定入院については、入院期間Ⅱ以内で80%以上の退院を目指すのが望ましい。そのためにはパスの見直しを)。当院での毎月の病床管理委員会でも点検しているが、結果として効率性係数が向上し、医療機関別係数にもプラスの影響が出る。
・在院日数が短縮すれば、病床利用率が下落し、トータルの収益は減少する可能性もある(可能性というより、必至である。)。ただ在院日数の短縮は入院診療単価の向上をもたらし、一般的には平均在院日数が1日短縮すると4000円程度単価が上がる。しかし、1日早く帰すということは入院延べ患者数が減少し、1患者あたり50,000円程度の収入を失うことを意味する。当院の4月の収益減少はまさにこのためだった。二兎を追うのは厳しいことだが、激変緩和措置としては新入院患者の増加を図るに尽きる。
・そこで求められるのは新入院患者の獲得だ。特に地方都市では高齢化による人口減少という環境下で、新入院患者を獲得することは容易でないという現実がある。しかしながら新入院患者が増えれば必然的に在院日数が短くなり、結果として重症度を満たす可能性が高くなる。ここ辺りが、人口の多い都市部と地方都市の違いである。都市部の大病院では平均在院日数8日でもやっていけているが、鹿児島などでは途方もなく高いハードルに思えるのだが・・・それでも目指していくよりほかにない。
2. 救急車への対応策
・新入院患者の獲得策として、短期的に結果を出しやすいのは救急患者を獲得することだ。仮に救急車搬送患者を入院させ、心電図モニターを装着すれば、2日間ではあるがA項目3点を満たすことになる。
・救急車搬送入院患者数を長期的に獲得するには、戦略的仕組みを構築することが必要である。救急隊からの要請数は救急隊の判断によるものであり、より近い医療機関が優先されるのが一般的であるからコントロールすることは難しい。しかし救急隊も人間であり、いつでも気持ちよく受け入れてくれる医療機関に搬送したいと考えることだろう。「うちは3次救急だから」などとお高態度で、救急隊がオーバートリアージをして2次救急を搬送してきた際に怒鳴りつけたりする医師も少なくない。救急隊がオーバートリアージするのは万が一を考えてのことなのだから、ある意味では当然であり、このような態度は慎むべきだ。医師は救急救命士にとって「先生」であり、先生らしく救急患者のトリアージを教えて欲しい。救急隊は地域の救急医療を支えるパートナーであることを再認識し、いつも気持ちよい受け入れを心がけたい。
