Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

徳之島巡回医療相談(後)(2016/07/13) 

2年半ほど前に字が書きにくいという症状で発病し、主に手足の筋力低下が主症状で、歩くことができずに両手を挙げることも叶わない。嚥下、構音、呼吸などの球麻痺症状は現在ほとんど認めない。月に一度、宮上病院で大学から来られる先生に診てもらっているという。また週に4回、デイケアでリハビリなどを受けている。
 時間の関係もあり、単刀直入に現在抱えている問題点を中心に話し合うことにした。
 まず第一は、夜間に排尿の度ごとに2,3回、ご主人が起きないといけないということである。また昼間も排尿の時に、仕事に出かけているご主人を呼び戻しているという。ケアマネもパンパースなど勧めるが、どうしても納得してくれないらしい。そこで私はいくつかの例も紹介しながら、「確かに排尿行為は人間の尊厳にかかわることで、どうしてもトイレまで行きたいという気持ちはよくわかる。でも今までの状態が続くと、ご主人は不眠となり健康が損なわれ、長期的に介護ができなくなる恐れがある。割り切って、夜間だけでもパンパースにしてもらえないだろうか」と説得した。
 このような問題は、病気になった人にしかわからないことだろうが、いろいろな条件を考えると、開き直って考えてもらうしかない。先日の川村さんの講演でも、癌の患者さんが夜間にトイレに行こうとして転倒することがもっとも大きなリスクであるということだった。
 私の義母も肺がんの終末期に自分でトイレに行くことにこだわっていたが、ある時期から「本当はおむつをしたくはないのだけど、みんなに迷惑をかけるからおむつを使うことにしたわ」と話していたことを思い出した。
 次は病気が進行した時の人工呼吸器を付けるかどうかという問題である。ここでも私の経験で、良かったと思える例やそうでない例などを紹介した。本人は現時点では「呼吸器は付けないつもりである。そのことは文書にして残しておきたいと考えている」ということだった。そこで私は「大体同じ年齢なので、考えておられることはよくわかります。無念さもよく理解できます。・・・最近はモルヒネなども使って、呼吸苦にさほど苦しむことなくする方法も考えられています」なども話した。また同じ看護師だった女性で、呼吸器を付けることなく超然と亡くなられた女性のことも紹介した。
 「この秋に、娘の結婚式を名瀬市で挙げる予定ですが、出席できますかね」と尋ねられたので、「全く問題はないと思います」と答えた。
 最後には「不安に思っていたことなど、率直に聞くことができました」と笑顔で応じてくれて、握手をして家を後にした。
 その後、車で20分ほどの居宅介護支援事業所「南風」に移動して、関係者連絡会を開催した。ここを30分ほどで切り上げ、空港に向かい、12時20分発の飛行機に乗った。揺れを覚悟していたが、さほど強くもなくホッとした。今回、耳栓を忘れてしまったので心配したが、航空機中耳炎にもならずに無事帰ることができた。