Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

世の中には感心な人がいる(後)(2016/08/02) 

奥さんも20年ほど民生委員として活躍されていたが、2年ほど前から手足の動きが悪くなり、脊髄小脳変性症と診断された。週に二回はデイケアに行かれるので、その間にもご主人は今も修理工場で仕事をされている。またデイケアのスタッフに「話し方がスムーズになるように、専門(言語聴覚士)の治療を受けるように言われているのですが・・・」と質問されたので、「この病気ではそれほど効果があるとは思えませんので、その必要はないと思います」とお答えした。
 また毎週、土曜日の午後2時頃には大型スーパーのニシムタで、一週間分の食料の買いだめをする。どこの家庭でもそうであるが、高齢になると毎日の食料品の調達も大きな負担になる。こちらも私の生活習慣ともかぶったので、話が盛り上がった。Fさんは5階の駐車場はいつも空いているので、エレベーターの前に停められる。車いすの出し入れなどに時間がかかるが、駐車料金の要らない2時間で買い物を済ませるようにしている。実は私も土曜日の12時過ぎに同じ店で、まとめ買いすることが多いのでその様子がよくわかる。家内がペイパードライバーなので、数少ない孝行の一つになっている。私は3階の混んでいる駐車スペースに車を停めることが多いが、Fさんの方が賢い選択だと思うことだった。
 食事はご主人が奥さんの両脇を支えて、ゆっくりと調理することにしている。時間はかかるがどうにかできている。「自分でできることは、できるだけ自分でされるようにした方がいいですよ」とアドバイスした。このご主人だったら、住み慣れた家で療養された方がいいに決まっている。問題は元気なご主人も高齢であるという事実は動かし難いので、「その後のことは考えておかなければなりませんね」と話すことだった。
 また東京に住んでいる娘からは「東京の病院で診てもらったらと言われているのですが、どうですかね」と尋ねられたので、「その必要はないです」とお答えした。この娘さんに限らず鹿児島県の場合には、子供たちは東京など大都市で生活していることが多い。そのためせめてもの親孝行という気持ちで子どもたちが、セカンドオピニオンなど都市部の大病院での受診を計画される。治療法などが抜本的に変わるような病気ならともかく、このような難病では全くの気休めにすぎない。お金と時間の無駄だとも考えるのだが、子どもの気持ちを考えると無下に否定できないこともある。
 家に帰ってから家内にこの話をすると、息子が名山小学校に行く頃から、「学校のさまざまな行事なども率先して取り組まれる有名な夫婦でした」ということである。
 「社会はこのような方々で支えられているのだ」とあらためて思うことだった。