Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

消化器内科の改革(前)(2016/12/19) 

世事一般、何事にもいえることだが現状を改革しようとすると、変えようとする側にもまた受け入れる側にも大きな壁が立ちはだかる。とはいえ、世の中が物凄い早さで大きく変わっていくこの時代、やはり変えていく勇気を持たなければ時代という大きな波に飲み込まれてしまうことになるだろう。
        先日の理事会で中崎先生(公認会計士)から当院の経営状況を「今だったらまだ間に合うが、このままでは他の病院と同様にボーナスも出せなくなる」という指摘があった。先々のことは不確かだが、「ここは頑張ってやるしかない」と腹をくくるのみである。ただみんなの協力がなければ一歩も前に進めない。
         医療制度改革も、改革の流れが早すぎて先を読むことができずにいる。しばらくしてから振り返って、「やはりそうことだったのか」と、忸怩たる思いで後悔することが多い。
        西俣名誉院長が元気に復帰されて、先日の常任理事会では今後の消化器内科の改革の方向について、熱くそして冷静に今後の取り組みについて語られた。医療制度改革の分岐点と言われる2018年までに目途をつけられなければ、当院に(当院に限らないことだと思うが)明るい展望は開けないと必死である。その先見性と現状を変えていこうとする情熱にはいつも感心させられるが、きっと責任感(740人の職員)と使命感(鹿児島の地に県民のためにも日本に誇れる正統な消化器内科を存続させたい)に立っての言動だと理解している。
        先生は今回の消化器内科の改革にあたって、二つの大きなテーマ(構想)を挙げられた。一つは公益法人としての利益の確保、もう一つが医師の過重労働の軽減である。
        今まで先生の先見性には何度も感心させられてきたが、そのヒントは「4,5年前に、厚労省の担当課長が話された内容や中医協で議論になったことを丹念にメモしておくこと、そうすれば数年後に政策として実行されるようになっている」のだという。西俣先生から渡された資料によると、確かに2011年3月に厚労省の新村課長(当時)が全国医政関係主管課長会議で、地域医療再生基金により公的病院の合併と合理化を推進し、その後に私立病院の統廃合を行う。そして選択と集中を強化していくことを明言している。2012年1月には診療報酬改定の基本方針の中に、病院勤務医等の負担軽減と医療と介護の役割の明確化と在宅療養の充実が挙げられている。2014年9月に土生課長は、非営利ホールディングカンパニー型法人制度を創り、垂直統合された公益法人には知事が任命した最高経営責任者(CEO)(医師でなくてもよく経営のプロ)が派遣され、効率的な経営により医療費の抑制が可能になると発言している。        恐らくこの流れの延長線上に、国が現在推進しようとしている地域医療構想や地域医療連携推進法人のスキムが形作られているのだと思う。先生の見通しでは、2018年度までには公益法人(都道府県知事に認可や監督の権限がある)の病院では、最低限黒字化しておかなければ、連携推進法人により病院や診療科の統合は避けられなくなるだろうとの見通しである。例えば、CEOから「あなたの診療科は赤字だし効率も悪いので、連携法人の別の病院の診療科と統合してください」と言われかねない。
        日本の医療政策はアメリカの後追いが多いのだが、アメリカの(統合した)巨大医療産業は非課税などの税制面での優遇措置を受けている。その引き換えに、利益に中から慈善的医療(福祉など)を提供することが義務付けられている。このスキムを日本に敷衍すると、公益法人は急性期医療で得た利益で同じ連携医療法人の介護事業などを支援していくことが義務付けられるようになるのだという。
このような状況の中で、効率化して利益を上げることと、そこで働く特に若い医師の過重労働を軽減し、臨床研究などにも時間が取れるようにとの目的で、消化器内科改革に踏み出そうとしている。今後、病院再編やマイナンバー制度の活用が進むと患者の病院選択や集中はより強まり、効率的な運営を準備しておかなければ適切に対応できない状況が予測される。