ダビンチ手術(2017/01/20)
1月12日、外部委員も含めた臨床倫理委員会が開催され、末永副院長から過去一年間のダビンチ手術の実績が報告された。ダビンチ手術とは低侵襲手術支援ロボットで、従来の腹腔鏡手術と同じように、いくつかの小さな切開部を作り、外科医の操作に従って内視鏡、メス、鉗子を動かして手術を行う。そのため精密な手術が可能となり、体への負担も少なく、今後さまざまな外科手術に適応拡大していくのではないだろうか。ただ現在では前立腺がんと腎臓がんには保険が適用されているが、胃がんと大腸がんにはまだ適用されておらず自由診療である。
当院では平成27年11月にこの委員会で承認されたものであるが、臨床研究ということで症例数40例(胃がん10例、直腸がん30例)を目標とした。そして2016年1月に初めての手術が行われ、この一年間で、胃がん6例、直腸がん22例の手術を終え、全例とも特に大きな問題もなく安全に施行されたとのことだった。病院としては経営的には確かに重荷になるが、先行投資と割り切って支援している。胃がんも大腸がん手術も安全性という点でもその優位性は実証されており、保険収載が待たれるところである。
私はたまたま、ちょうどこの日に届いていたBEST DOCTERS(法研)に紹介されていた絹笠祐介先生の記事を読んでいたので、末永先生の報告を興味深く聞くことができた。
絹笠先生は静岡県立静岡がんセンター大腸外科部長で、大腸がんロボット手術の第一人者で、当院の手術の時にも何度か来ていただいた。委員会でも外部委員からも質問があったが、ロボット手術のメリットについて、一般的に進行直腸がんの再発頻度は10%とされているが、静岡がんセンター(手術全体の9割が腹腔鏡下手術)では4%、ダビンチ導入後は1%だという。
先生によるとこのような成績を残せる背景は、何か問題が起きた時に決して放置せず、徹底的に検証する姿勢だという。「よくあるのは上手くいかないと、糖尿病だったからとか太っていたからとか患者さんのせいにしてしまうこと。望まない結果の時に術者側に問題がないはずはありません。問題に真摯に向き合い、何がそれを招いたのか徹底的に反省します」。そうして明らかになった要因は何を変えれば防げるのかを考え、実行する。治療成績はその繰り返しでしか良くならないという。
先生の手術に臨む際の信条は「物事を適当に済まさない、ごまかさない。手術は切っていい所とそうでないところを明確に区分することが大切です。分らないところを分らないまま進めると、ミスにつながります。なぜそこを切るかが理屈としてきちんとわかり、それを言葉にできれば手術中に迷うこともないし、出血もほとんどありません。そして実直であることが一番大事、漢字にたとえるなら、きれいに書くより、書き順を正しく書くことにこだわる。手先の器用さは重要ではありません。器用な人よりも、手技の理屈を大切にする人の方が主義が上手くなる。今後、ダビンチ手術が普及するにつれてますますそうなってくるでしょう」と話されている。
私は外科医ではないが、なんとなくわかる気がする。
当院では平成27年11月にこの委員会で承認されたものであるが、臨床研究ということで症例数40例(胃がん10例、直腸がん30例)を目標とした。そして2016年1月に初めての手術が行われ、この一年間で、胃がん6例、直腸がん22例の手術を終え、全例とも特に大きな問題もなく安全に施行されたとのことだった。病院としては経営的には確かに重荷になるが、先行投資と割り切って支援している。胃がんも大腸がん手術も安全性という点でもその優位性は実証されており、保険収載が待たれるところである。
私はたまたま、ちょうどこの日に届いていたBEST DOCTERS(法研)に紹介されていた絹笠祐介先生の記事を読んでいたので、末永先生の報告を興味深く聞くことができた。
絹笠先生は静岡県立静岡がんセンター大腸外科部長で、大腸がんロボット手術の第一人者で、当院の手術の時にも何度か来ていただいた。委員会でも外部委員からも質問があったが、ロボット手術のメリットについて、一般的に進行直腸がんの再発頻度は10%とされているが、静岡がんセンター(手術全体の9割が腹腔鏡下手術)では4%、ダビンチ導入後は1%だという。
先生によるとこのような成績を残せる背景は、何か問題が起きた時に決して放置せず、徹底的に検証する姿勢だという。「よくあるのは上手くいかないと、糖尿病だったからとか太っていたからとか患者さんのせいにしてしまうこと。望まない結果の時に術者側に問題がないはずはありません。問題に真摯に向き合い、何がそれを招いたのか徹底的に反省します」。そうして明らかになった要因は何を変えれば防げるのかを考え、実行する。治療成績はその繰り返しでしか良くならないという。
先生の手術に臨む際の信条は「物事を適当に済まさない、ごまかさない。手術は切っていい所とそうでないところを明確に区分することが大切です。分らないところを分らないまま進めると、ミスにつながります。なぜそこを切るかが理屈としてきちんとわかり、それを言葉にできれば手術中に迷うこともないし、出血もほとんどありません。そして実直であることが一番大事、漢字にたとえるなら、きれいに書くより、書き順を正しく書くことにこだわる。手先の器用さは重要ではありません。器用な人よりも、手技の理屈を大切にする人の方が主義が上手くなる。今後、ダビンチ手術が普及するにつれてますますそうなってくるでしょう」と話されている。
私は外科医ではないが、なんとなくわかる気がする。