Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

健診模様(3)(2017/01/18) 

また60歳を過ぎたやせ形の男性の聴診をしていると、腹部に3センチほどの小さな手術痕がある。「どうしたのですか」と尋ねると、「11年ほど前に、ここで胃がんの手術をしてもらった跡です。夏でしたが一月ほど待ってもらうと新しい器械で手術できるということで待ちました(腹腔鏡手術のことか)。指宿から来られた二人の兄弟の先生(生駒先生か)に手術してもらいました。その時、あなたはこの術式の第一号だと言われました」と話される。「栄えある第一号ですから、節制して、長生きしないといけませんね。責任重大です」と、笑いながら部屋を後にした。
         40歳代半ばのやせ形の男性、既往歴に数年前に脳動脈瘤が見つかり、手術したと記載されている。当院でのPET健診の時には自覚症状は何もなかったが、オプションで脳ドッグを施行した。すると15ミリほどの巨大な脳動脈瘤が見つかり、鹿児島医療センターでクリッピングの手術を行い、後遺症も残らずに済んだという。「命拾いをしました」と神妙な様子である。運のいい人とそうでない人との差である。
         こちらも40歳半ばの独身の男性で、体重と腹囲が100センチ前後である。太った人に悪人はいないと言われるが、文字通りニコニコしていて自覚そのものがなさそうである。菜の花マラソンの後だったが、「先生、来年はマラソンに出ていいですか」と言われたので、冗談かと思ったら、「今年は友だちの応援に回りましたが、これでも8回出ているんですよ」と真剣である。「走っても、すぐに護送車に収容でしょう」と言うと、「それが時間の配分がうまくて、今までずっと完走です」という。血液検査をみると立派な糖尿病で、肝機能も悪いのだが、どういう訳か脂質系は全て正常値以内である。冗談に「ここだけ、血液を取り替えたんじゃないですか」と言うと、即座に「ASKAじゃないのだから」と答える。私は最初このトークについていけなかったが、武さんと山田看護師はにゃっと笑っている。後で武さんは「あのように答えるのは、きっと初めてではないでしょうね」と言うが、確かにテンポが良すぎた気がする。「来年は走れるように、20キロは落とさないと」言うと、「途中でコロッといってもいいのですから」と言うので、「それでは主催者の迷惑になるでしょうが」と言うと、「それもそうですね」。「いずれにしてもちゃんと体重をコントロールしないと・・・まだ先があるんだから」でお開きとなった。
         今度は40歳代のスマートな風貌の男性、「どこの部署ですか」と尋ねると「伊集院にある農業法人に出向しています」という。いろいろ聞いてみると、株式会社「春一番」という鹿児島銀行が共同で設立した法人の社長ということである。
         「それはまた、エライ風流な名前で」と茶化すと、「九州南部の温暖な気候を生かし、全国に先駆けて出荷する狙いを込めて『春一番』と、頭取が命名したんです」と真面目に答える。社長自身は農業経験など全くなくずぶの素人だということだが、昨年の10月に玉ねぎを植えて、今年の3月ごろには収穫するそうである。「収穫の時にはおそらくマスコミも来るでしょうから、見に来られませんか」と誘いを受ける。「農業従事者の減少や高齢化、耕作放棄地の増加という課題解決に向けて、自らが農業に参入してビジネスモデルを構築するのだ」と志だけは高い。