Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

健診模様(1)(2017/01/16) 

従前から行ってきたPETの結果説明に加えて、昨年12月からは健診部での簡単な内科的診察と結果の説明をすることになった。予防医学の重要性については今さら言うまでもないことだが、早期にがんが発見されたり、生活習慣病の入り口でギアチェンジがなされて健康を回復した人も多いのではないだろうか。また私のような「老医」にとっては人間を多面的に診れる楽しみや、今まで南日本新聞などに何度も寄稿してきたこともあって、話が弾むこともある。
         一方では、患者心理(健診だから厳密には患者ではない)などについて考えさせられることも多い。病院スタッフが何気なく発する言葉、例えば「撮り直します」とか、たまたまいつもの部屋が空いていないので「別室で説明します」と言うと、「きっと結果が悪かったのではないか」と要らぬ心配をしてしまう。またある女性は、エコーの途中で技師さんが替ったのを「病気が深刻なので、もっと専門の人に替ったのかも」と邪推していた。これが患者心理というものだろうが、一言説明があると、要らぬ心配をしないで済むことになる。
         さて「生活習慣病」についてであるが、某銀行(バレバレかも知れないが)の行員さんの体重、腹囲、喫煙、飲酒、血液検査の結果を眺めながら、「あなたもやはり銀行病ですね」とか、「単身赴任ではないですか」と苦笑いしながら説明することが多くなっている。
         体重が増えて、肝機能にもほどほどの問題があって、悪玉コレステロールや尿酸値の上昇をみる患者さんの多くが、鹿児島市内から地方や離島への単身赴任者である。「飲んで、食べて、運動もしないでしょう」と問いかけると、一様に「そうですね、付き合いで飲む機会は多いです。運動もする暇もありませんし」と頭をかきながら、「でもこれも仕事の一部ですから」と、しっかりと言い訳だけは用意している。ただ今注意しておかないと、あとで大きな代償を払わされるのが「生活習慣病」である。
         たまに、単身赴任者の中でもデータのいい人がいるのでその理由を聞くと、「銀行から帰って一時間ほど走ったり、散歩しています」とか、「自分で食事を作っています」と見上げた人もいる。「よく作れますね」と問いかけると、「赴任する前から家事など手伝っていましたので」と。「やはり、そのような素地があってできることなんだ」と理解することである。私の場合、単身生活は結婚する前の数年間だけなのでその苦労はわからない。きっと私も行員だったら、多くの行員同様に「銀行病」になっていただろうと確信できる。意志がさほど強くないし、また卵焼き一つ自分で作ったことがないのだから。
         さてこの生活習慣病であるが、一言で言うなら「快楽(欲望)習慣との闘い」である。「わかっているけどやめられない」のである。「今やっていることが変えたくない生活習慣」だからである。「美味しい物を好きなだけ食べる。休日は寝転んでテレビ見ながらごろごろしたい。適量なら酒は百薬の長である。酒ほど人生を楽しくさせるものはない」などこれほど楽しい生活があるだろうか。