Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

国民皆保険を持続させるために(2017/02/28) 

2月12日、日経朝刊「日曜に考える」は日本のこれまでと、今後の医療政策について論評している。大見出しからその内容は大体想像がつくのだが、「膨らむ医療費 次世代にツケ」、「負担上回る給付 皆保険に綻び」「コスト意識の向上」などとなっている。
         1961年に国民皆保険制度が確立して以降日本では、基本的には全ての国民が公的保険に加入し、保険証一枚で自由にどこの医療機関でも受診し、診療を受けることができた。治療を受けて支払う医療費の負担も1~3割で、高額になっても1か月の上限が決められていた。ところが高齢社会が進行し、医療費が増大、逆に負担する逆年世代は減少して、総医療費の負担割合が患者1割、企業や加入者の保険料で5割を賄い、残りの4割は公費で賄うようになった結果、国の財政負担が増加の一途をたどっている。このママの状況が進むと、日本の誇る公的医療保険制度そのものの破たんも危惧されている。
         国(厚生労働省)もさまざまな手を打ってきたが、根本的な解決策には至っていない。この欄では二人の識者が意見を述べている。島崎謙治氏(政策研究大学院教授)は「高齢者の負担見直しを」というタイトルで、保険制度の過去の歴史から始めている。私も詳しく知らなかったことだが、当初は高価な抗生物質は自由に使えず、同じ疾病での保険適用は3年間に限られていた。このため国民健康保険の患者の自己負担の割合も5割と高かったのだという。その後、高度経済成長の恩恵を受けて、1973年から制限診療の撤廃や患者負担の3割への軽減が成されたという。今後、高齢者の負担の見直しや、安定した財源の確立のため、消費税率の引き上げも提唱している。
         一方、印南一路氏(慶大教授)は「政策転換、理念の議論から」というタイトルで、「守るべきものは守る政策」に転換することが唯一の方法だと述べている。すなわち基本となる価値観は一人ひとりがそれぞれの「幸福を追求する自由」を保証することであり、この価値観から医療政策の優先順位を議論するため3段階の理念を提案している。
         第一の理念は「自律の原理」である。幸福を追求する自由を守るため、それぞれがどういう人生を送りたいのか意思決定の機会を最大限尊重すること。第二の理念として「救急医療の保証」を挙げている。救急医療の財源は国家予算の中で医療以外の分野を含めて優先的に確保する。自律を尊重するため本人が拒否すれば無理に救命されない。第三の理念は「共生の理念」である。自律を貫こうとすると、他者の自律を制限することもある。共生するためにはバランスが必要だ。厳しい財政のもとでは、救命目的ではない医療をどこまで公的に保障すべきか再考することになる。