Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

健診模様(6)(2017/02/14) 

行員の中には、「郷に入りては郷に従え」という諺を文字通り実践して、その生活を楽しんでいる人もいる。
         この浅黒く日焼けした小太りの40歳代後半の男性、とても銀行員には見えずいっぱしの漁師のようである。外見と血液検査のデータから、「遠くの島」に単身赴任の男性とお見受けしたが、その予想はピッタシあたっていた。
         「もう、毎日がパラダイスですよ。夕方、ちょっと出かけて岸辺から棹を垂らすと、もうイカやアジ、何でも釣れるのですから。それを自分でさばいて、黒糖焼酎と一緒に食べると、これは最高です」と言われる。たしかにこちらもご相伴に与りたい気持ちになる。もうその島に赴任して2年近くになるそうだが、仕事も遊びも楽しくて帰る気になれないという。「家内は、息子が県外の高校に通っていますので、そっちが忙しくて私の方など忘れてしまっているようですよ」と、屈託ない様子である。
         確かに、一度しかない人生、与えられた場所で、職場で人生を思い切り楽しむ生き方も良しと思うのだが、それがなかなかできない。
         銀行員の健診ではなく一般の人の健康診断では、視診や聴診など簡単な診察を行っている。時間があれば、健康相談や指導を行うときもある。身長、体重の数字を見ながら、実に肥満の人が多いことに驚く。このような人は既往歴に決まって高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、そして時に糖尿病のチェックが入っている。
         60歳の男性、標準体重からは15キロはオーバーしている。聴診器をあてながら、「ちょっと体重のコントロールを考えた方がいいですよ」と言うと、「太り気味ですか?」と言うので言いよどんでいると、すかさず「太り過ぎですよね」と自らテンポよく言い換える。「以前は職場まで歩いていたんですが、最近バスを使うようになってから、どんどん太ってしまいました」。
         同じような年頃の男性、こちらは標準体重から20キロのオーバーしている。それを指摘すると、「ちょっとやせんといけませんね」と言うので、こんどは間をおいて「ちょっとじゃなくて、どっさりですね」と言い換えた。皆さん、自分に対する評価は、甘くて控えめのようである。
         先日のPETの結果説明では、中国人3人を担当した。春節連休を利用した観光客のようで、オプションにPET検診が含まれているようだ。福岡在住の中国人の通訳(鹿児島にも6年住んでいたことがあるということで、日本語も流暢である)がついているので、結果説明には問題ない。いずれも40歳代後半だったが、通訳が「この検査は毎年した方がいいかと聞いています」と言うので、「お金のこともありますので、2年に一回でもいいのではないでしょうか」と答えると、通訳が「この方々は富裕層ですので、お金のことは心配しなくても結構です」と即座に返事した。世の中も変わってきたものである。