Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

健診模様(11)(2017/04/25) 

「画像診断見落とし患者死亡、遺族、国に再発防止要請」という3月18日の日経新聞の見出しである。
       この男性は2015年10月に受けたCT検査で、肺がんの疑いがあるとされた。だが主治医は画像診断書を十分に確認せず、肺がんの疑いの事実を見落とした。昨年10月の再入院で肺がんと判明するまで治療されず、男性は2月に亡くなった。同病院もミスを認めている。
       先日、PET健診部の担当者から、「先日受けた結果説明と、送られてきた報告書の内容が違うので再度説明してほしいということですが・・・」という電話である。夫を伴って40歳前半の女性だったので、再度説明した。
       この女性の不安は、「送られてきた報告書の超音波の画像やCT写真に、矢印がたくさんついている。一緒に検査した夫の報告書には一つもなかった。矢印の部分は何か問題があって・・・がんの疑いがあるということではないですか」と言うのである。「矢印に大きな意味はなくて、報告書の説明をわかりやすくするために付けただけですよ」ということで一応の納得は得られた。それでもがんへの不安は大きいようで、「この矢印の部分は大丈夫でしょうね」と何度も念を押される。
       高齢社会になり長生きすることが普通のこの時代、二人に一人ががんになるという調査結果も出ている。CTなどの画像検査では、放射線科の専門医は健診の場合、「米粒ほどの結節があり、少しでもがんの可能性のある場合には3,6か月後にCTを取り直して比較検討しましょう」という報告を書かれることが多い。念には念を入れて、網を広げる手法に異存はない。確率的にはこのような結節ががん化する可能性は低いとはいえ、万が一がんを見落としたとなると大事になる。ただ例えば80歳以上のお年寄りで、遠方から来られている場合には、再診してのCT撮影は大きな負担となるのは目に見えている。そのために、説明する私のトーンは少し下がってしまうが、そのような相手の事情など「忖度」することなく機械的に処理してしまった方が、あとあと問題が起こりにくいだろうとも思う。
     今回の方の場合、もし数年、あるいは十数年あとに矢印の部分にがんが見つかったとしたら「私は心配で、病院に再度足を運んで詳しく説明を求めたではないですか」と言われることだろう。「今日の時点ではがんの可能性は少ないですが、数年後のことは誰もわかりません」と言うより他ないと思うのであるが、微妙で解決の難しい問題である。