Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

在宅ひとり死(後)(2017/04/14) 

祝賀会の最後の頃、上野先生のテーブルに伺い、ちょっと話をするチャンスを持った。私はこの日まで上野先生とは直接の面識はなかったが、5,6年前に機構本部の理事会に参加していた頃、(非常勤)理事だった村田幸子さんと時々話をすることがあり、その時にも上野先生や本のことも話題になったこともあった。その話から切り出してみたら、やはり村田さんとは懇意にされているようで、「7人で、楽しくやっているみたいよ」と笑いながら話されていた。上野さんは私より1歳下かと思われるが、嘗ては「京都大学全共闘闘士」というイメージ(ネットで検索、真偽のほどは不明)や物議をかもしてきた発言のイメージと違って、穏やかで話しやすいタイプに思えた。
       (6,7年前に、私が南日本新聞に投稿したものを転載する)
       「お一人さま」の生き方
       人は生まれるときも最期のときも一人であり、結局頼れるのは自分一人しかないといわれる。医師として入院している患者さんに接するとき、その思いは深くなる。
       先日、国立病院機構本部からの役員会の帰り、元NHKの解説委員で現在福祉ジャーナリストとして活躍されている村田幸子さんに、「駅まででしたら、私の車に乗りませんか」と声をかけられた。大腸がんや股関節の置換術もされたということだが、すこぶるお元気である。車の中で茶封筒を渡されたが、新聞などに連載された随筆で日常のことがさりげなく書かれている。私が特に興味を惹かれたのは、「友は財産」と「ひとりを生きる」だった。
       村田さんを含めて「キャリア姉さんズ」(村田さんの造語かな)の6人は、かねて「将来、気の合った者同士で一緒に暮らせたら楽しいわねえ」と話し合っていたが、この思いが数年前に実現した。当初は自分たちで家を建てるつもりでいたが、土地探しが難航し計画をいったん白紙に戻した。ところが仲間のひとりがマンションを見つけてきて、話はとんとん拍子に進み、「全員一致」で好みの部屋を選び申し込んだ。「長年仕事をしてきたわれわれは、適度な距離を置いて付き合う術を身につけている。またそれぞれの分野で培った力を集めれば、結構ユニークなことができるかも知れない。高齢期を元気で過ごし、地域で何か活動したいという夢の実現は、近居という形で整った」。そして「もたれ合うことなく、しかしまさかの時にはお互い助け合い、安心して迷惑をかけ合うことができる」とある。
       私がこの話にひとかたならぬ興味を持ったのは、次のような伏線があったからだろう。もう昔のことになるが、東京に出かけた時に食事したりする女性から、「先生、お金は出すから霧島の温泉の出る場所に、老後にみんなで生活できるようなケアホームを建てて欲しいな」と要望をされたことがあった。いずれの方も才能豊かなキャリアウーマンたちばかりなので、このような人たちで共同生活が営まれたら楽しいだろうが、管理人である私は大変だろうなとも思ったものである。ところがこのような女性は恵まれた一部の人で、先日ある中年女性にこの話を向けると、「一人暮らしの現実はもっと厳しくて、税の負担は毎年増えるし、10年後の生活を考えると鬱になりますよ」ということだった。
       今後団塊の世代が、大量に後期高齢者になっていく。村田さんも書かれているが、ひとり暮らしの女性以上に懸念されるのが、ひとり暮らしの男性の生き方だろう。食事、洗濯、掃除など生活的自立のできていない男性、そして男女とも病気を抱えたときの一人暮らしの人たちの生活をどのように守っていくのか、日本の抱える身近で深刻な課題である。