Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

鹿児島市勤務医会での福元紳一弁護士の講演(前)(2017/06/27) 

6月8日、鹿児島市勤務医会の研修会で、弁護士の福元紳一先生が「弁護士からみた医事紛争回避のポイント」と題する講演を行った。福元先生は地元のラ・サール高校から東大法学部を卒業され、平成元年に弁護士登録、9年に鹿児島市に法律事務所を開設され、医事紛争などの弁護士活動を精力的にされている。三船病院長の年永先生とは中・高が同級生、当院の川内先生とは高校が同学年ということである。年永先生は司会をされていたが、「かっての同級生に先生と言うのはちょっと変な感じですね」と笑いながら紹介していた。
         講演は6章に分けられており、実務的でわかりやすく、聞くものを納得させる内容の濃い、いい講演だった。
         まず第一章では、「医事紛争の増減の経緯と原因」というもので、年代ごとの裁判事例の推移を示しながら、戦後法曹人口の少ない時代には医事紛争など手間暇のかかる案件に係る弁護士も少なかったが、弁護士数の増加や横浜市立大学の患者取り違えや広尾病院事案などで次第に増加していく。ところが2005年ごろから数字の上では減少傾向に転じていたが、2009年頃から再び微増となっている。先生の分析では微減の原因は病院側の医療安全に対する組織的な取り組みも一因であるが、病院側が損保会社と契約するようになり、裁判になる前に示談で済ませている事例の増加によるもので、紛争案件は減っていないだろうという分析である。
         次に増加要因として、カルテ開示制度の確立で患者・患者弁護士側には医療記録の入手が極めて容易になったこと、各学会による診療ガイドラインの増加により、過失の主張・立証が容易になったこと、医療事故調査制度の実施により、調査結果の報告を基に事故の原因(紛争になった場合の争点)が明確になったことなどが挙げられる。医療界が医療安全対策として一生懸命に努力してきたことが、皮肉にも紛争案件の増加という結果を招いてしまったようである。
         そこで先生は回避のポイントとして、
         (1)医事紛争の減少要因の拡充に努める。①インフォームドコンセントの充実、②診療情報の開示に備えての記録の整備、③チーム医療におけるカンファレンス体制の拡充、④安全管理に関するシステムの整備、
         (2)医事紛争の増加要因の抑制に努める。①診療ガイドラインを意識した診療を行う、②医療事故調査制度の適正な運用に努めることをあげられた。