Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

聖マリア学園吉野幼稚園「父の日お祝い会」での講演(1)(2017/07/03) 

何事にもいえることだが、自ら関心を持ってアンテナを高くしておくと、向うの方から自然に有益な情報が飛び込んでくるものである。
日経の「共育社会をつくる(2017年6月15日)」という特集では、「精鋭育成『熱いうちに』」というタイトルの一文に「生まれた場所や家庭によらず、子供の眠れる能力を最大限引き出す。挑戦への切符を渡すこと」の重要性について触れている。そのなかで、「人生最初での投資が国の長期的発展につながる。ノーベル賞受賞者(2000年)のヘックマン・シカゴ大学教授が、就学前に質の高い教育を受けた子は成績がよく犯罪率も低いと分析。人的投資が社会に与える好影響を年率7~10%とはじいている」と論じている。また東大大学院の秋田教授によると、「遊びや集中力といった、非認知能力を育てる教育の質を重視するのが世界の流れ」だという。
 実はこの記事を読んでから3日後の18日の父の日に、聖マリア学園吉野幼稚園で「子育てにおける父親の役割」という内容の講演を頼まれていた。結局のところ子育ても「人材教育」の一つではないかと考えて、引用しようと思い立った。「ヘックマン」と「非認知能力」いう二つの言葉が、私のアンテナにピタッと引っかかったのである。2年ほど前のこの雑感で、「人材育成」について書いたことを思い出したのである。
人材育成のポイントとして、スキル(広義の技能)アップには、認知能力と非認知能力(性格スキル)の二つがある。前者はペーパーテストなどで測れる類の能力である意味では比較的簡単であるが、後者は個人的形質に依拠するものであるのでとらえどころのないものと思われがちである。ところが後者こそ、人生の中で学ぶことも可能で変化しうるものだという考え方に変わってきている。
 非認知能力は、「ビッグファイブ」という五つの要素から構成されている。この考え方は、ヘックマン教授の研究によるものである。その五つとは、真面目さ(自己規律)、開放性(好奇心)、外交性(積極性)、協調性(思いやり)、精神的安定性(不安、衝動が少ない)で、とりわけ真面目さの大切さを強調している。今回の講演でも「真面目さ」については強調しようと思った。真面目であることは「くそ真面目」などと揶揄されて嘲笑されることもあったが、人生においては真面目こそが最も重要なことなのである。
 ここでちょっと話は飛ぶが、薩摩藩の「薩摩は人をもって城となす」の話をした。薩摩藩は屋形造りの城で、勇壮な天守閣のない城である。そこで発想の転換をして、人が城の役割を果たすのだとの考え方のもとで人材教育には力を注いだ。その一つが1865年の英国への使節団の派遣である。15人の若き留学生を率いた3人の使節団の一人が五代友厚である。その記念碑が「若き薩摩の群像」という大きな銅像で、鹿児島中央駅の前に建っている。なお五代友厚は南風病院から歩いて10分ほどの場所に生家跡があるが、今まであまり知られてこなかった。