Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

健診模様(16)ファンクラブ(2017/08/21) 

世の中には私の想像力を超える「別の世界」があるものだと、つくづく思うことだった。
     30歳代半ばの、ふくよか過ぎる人のよさそうな女性が診察室に入ってきた。カルテを見ると、やはり体重が標準より15,6キロもオーバーしている。いつものパターンの無機質な声で、「あと15キロほど体重を落とさないといけないですね」と言うと、「またリバウンドしてしまって・・・これでも60キロぐらいは落ちたんですが」とこともなげに言われる。聞き間違いかと思ってもう一度尋ねると「130キロほどあったのですが、従兄の医者に『そのままだったら命を落とすよ』と脅されまして、肥満外来に通ったんです」と言われる。
     そこから「どうして?」が始まったのである。
     この女性、数年前ある宝塚スターのファンクラブの副代表をしていたことがあった。そのスターの名前を聞いたが、私は知らなかったので「ちょっとその辺りの事情には疎いものですから」と詫びると、「そんなに有名ではなかったですから」と一応慰めてくれる。
     これも私のあずかり知らない世界であるが、宝塚スターにはそれぞれにファンクラブがあり、代表には経済的にも余裕のあるしかるべき人が就いている。一方、副代表は「おっかけ」のようなご執心の人が就任するのが普通なのだという。そしてこのファンクラブの周りを囲むように、「タニマチ」という人たちがいるのだそうである。タニマチは大阪の焼き鳥チェーンのオーナーとか、たくさんの成金の叔父さん連中で構成されているそうである。
     この女性の場合、公演があるときには、月に4,5回は鹿児島から宝塚に通って、夜はタニマチの接待で「飲んで、食って」いるうちに、気が付くと130キロまで肥っていたというのである。まさに「食い散らかして」、フォアグラ状態にさせられてしまったのである。 
     若いうちは何かに真っ黒になることはいいことだが、ちょっと道を間違ったのではないかと思わないでもなかった。本人に聞くと「全然、後悔はしていません」ということだった。
     話は変わって・・・
 5月31日のこのランで、健診模様(15)鹿児島の方言(キンベ)というタイトルで、次のようなことを書いた。50歳代の女性が、「実家が山川で、時々マンゴー栽培の手伝いなどをやっているんですが。温泉の熱を利用しての温室栽培で、本当に美味しいですよ」という話から、「方言」の話へと繋がって「マンゴーの受粉にはキンベを利用しています」。
     8月10日、秘書の鳥居さんから意味不明の話。「さきほど東さんという方が先生にマンゴーを持ってきたということですが・・・何でも以前、キンベのマンゴウを所望されたとか」。お昼過ぎ東さん本人が私の部屋に、立派なマンゴー一個を持って訪ねて来てくれた。「約束のマンゴーです。食べてください」と言われる。健診の短い時間で私が「マンゴーを所望したかどうか」は忘れたが、これもキンベの持つ縁である。