Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

リーダーについて(3)(2017/09/27) 

昭和55年6月に神経筋接合部の研究で渡米した。恩師はエンゲル先生で、世界の神経学の泰斗で、世の中にはこんなに頭のいい人がいるものだとびっくりした。日本人の人見知りなどの心もよくわかる人で、忍耐力も持ち合わせておられた。そして何より学問の厳しさ、研究の面白さも教えて下さった。適応力の悪い私が3年間も楽しく仕事ができたのは、ひとえにエンゲル先生の人柄のお蔭である。メイヨークリニックからは帰国後に、research award(賞金も)を頂いた。
 昭和59年から南九州病院に出張したが、平成3年からの7年間、副院長として仕えたのが川嶋先生である。先生は長崎大学を卒業してもともとは外科医だったが、請われて厚労省の医系技官となり、九州医務局長も務めた。先生は経営のプロらしく、当時はまだ珍しかったコンピューターを駆使して経営の数値化を行い、職員の意識改革を行った。
 金澤先生には厚労省の医療安全対策委員会、法務省の「矯正医療の在り方に関する有識者検討会」でお世話になった。特に難病対策委員会では私は副委員長として委員長の金澤先生をサポートする立場にあったが、委員会ではいつも隣の席で、難病の議論のみならず、委員会の進め方などについても学ぶことができた。美智子妃の信頼も厚く、皇室医務主管などを12年間にわたって務めておられた。昨年、膵がんのために亡くなられたが、私が現在も厚労省の疾病対策部会長などをしているのは先生の置き土産かも知れないと感謝している。
 私が紹介した5人の先生方にいえることは、豊かな人間力を備えた人格者だったといえる。人間力とは、社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力(2003年内閣府の「人間力戦略研究会」)とまとめられている。そしてその「人間力を構成する要素」として次のようなことが挙げられている。
 ①知的能力的要素・・・基礎学力、専門知識やノウハウ、学力や知識を継続的に高めていく力、論理的思考力、創造力
 ②社会・対人関係力的要素・・・コミュニケーションスキル、リーダーシップ、公共心、規範意識、他者を尊重しお互いを高め合う力
 ③自己制御的要素・・・①②を発揮するための意欲、忍耐力、自分らしい生き方を追究する力。
 さてこの中で、最も重要な要素は「コミュニケーションの大切さ」ではないだろうか。
 それは、病院と言う組織では、1)ともに働くスタッフ間、そして2)患者さんとのことになる。
 基本は①傾聴(相手の気持ちになって、相手の話をよく聞くこと)、②そして何でも、自由に、くつろいで、安心して、気がねなく、本音で話せる雰囲気を作ることである。
 この「人間力を高めるためのポイント」として次の五点を挙げている。
 ①相手のことを思いやる・・・相手に思いを巡らすことは、自分が何をすべきかを考える上で最も大切。
 ②自分自身を評価する・・・単なる長所や短所だけでなく、「自分はこういう行動や思考のパターンを取りやすい」といった考察まで踏み込む。
 ③常に自分を高める・・・継続的に高めていく力が大切。特に読書は大切。
 ④素直であること・・・「誰から言われた」ではなく、「言われた内容が自分にとってためになるか」を基準に考える。
 ⑤目標を設定し、実行する力・・・ビジュンを明確にし、その時その時の課題をクリアすることに注力し、仕事を先送りしない。