Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

健診模様(22)離島から(2017/09/14) 

41歳のすらっとした色黒の男性である。資料に「公立学校」となっているので、「どこの学校ですか」と聞いてみる。「悪石島小・中学校です。今年の4月に赴任したばかりです。トカラ列島の一つで十島村に属しています」という。
 ネットで調べると、鹿児島本港南埠頭から十島村営フェリー「フェリーとしま」で11時間、「島のあちこちに石があり、崖から落ちてきそうだから」や、「平家の落人が、追手が来たがらないような名を付けた」など諸説があるという。
 現在、島の人口は74人、漁業と畜産が主な産業で、生徒は小・中合わせて10人、そのうち地元の生徒は3人(みんな女性で、小2、中1、中3)だという。その他は、教師が10人で、教師の子どもが4人、保健師の子どもが3人だという。
 単純に考えると後2年も過ぎると、地元の生徒は一人か二人になってしまう。地続きの僻地だったら統合してバス通学もできるが、島では難しい。だからと言って学校がなくなると無人島になってしまう恐れもある。安全保障上の問題も出てくる。どのように考えていけばいいのか、頭を悩ます問題である。
 67歳の女性、南種子からである。「私も先週、西之表でパーキンソン病の医療相談に行ったばかりです」と話を持ちかけると、私の胸のネームプレートを見ながら、「やっぱり先生でしたか。ずいぶん昔、南九州病院でのヘルパー研修で、先生のお話も何度もお聞きしました。あの時は(一級ヘルパー研修)には、近くの旅館に泊まり込んで研修を受けました」。「現在もヘルパーのお仕事されているのですか」と聞くと、「いいえもうやめました。でも親の介護に大変役立っております」と言われる。
 50歳代の凛とした雰囲気の女性、奄美大島からPET健診に訪れた。結果説明の時、「特に、がんの心配はなさそうですが・・・」と話すと、「母の看病疲れのためか、どうも最近体調が思わしくないので心配になって検査を受けました。母は95歳になりますが、おむつを嫌がって、夜中も5回ほど起きて、トイレに連れて行っています」と言われる。「そりゃ、毎日では疲れますね、それにしても親孝行ですね」と返すと、「5人の子どもを育ててくれましたので」と言われる。
 小学校の先生をされていたが、30歳代の半ばの頃、腱鞘炎を患い、医師から手術を勧められた。たまたま鍼灸師との出会いがあり、数か月施術を受けたらすっかり良くなった。母の介護など考えると自宅で仕事ができたらいいと思って、40代になってから学校に通い鍼灸師の資格を取得し、現在は開業しているという。「私、子供ができずに、まあそれだけでもないのですが、離婚しました。そこで女性の悩みや生理不順などに針灸で少しでも力になれたらと思っています」と言う。
 待合室に置いてあった私の本を読んでくれたらしく、「わあ、先生が書かれたんですか。注文しようと思って出版社を控えてきました」と嬉しいことを言われる。早速、一冊進呈することだった。