Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

甑島巡回医療相談(後)(2017/10/04) 

さねとさんは私が南風病院に移ってからは南風病院を受診しておられたが、肺がんを合併し南九州病院で手術を受けた。ところが術後経過が思わしくなく肺炎などを併発し、気管切開と人工呼吸器、そして胃瘻と、結果的には延命治療となり、昨年の6月に亡くなられた。
 今回、奥さんと2時間ほどお話をする機会があったが、83歳での肺がん手術の選択や結果としての延命治療に関して少し悔いておられた。手術に関しては私も少し懸念を持っていたが、本人の意思であったように記憶している。人生、思い通りにはいかないものである。
 ところで奥さんは現在90歳になるが、頭脳明晰で介護保険の審査では満点で、要支援の評価も受けられなかったと笑いながら話しておられた。くも膜下出血や脳梗塞を克服され、今年は腸閉塞となり甑島の医師の紹介で、当院に救急搬送され手術を受けられた。南風病院で主治医だった勝江先生には大変感謝されていた。やさしい嫁さんのもとで、とても幸せそうに思えた。
 11時半ごろ嫁さんの運転で、里から薩摩川内市の支所が置かれている中甑まで車で送ってもらった。昼食を支所の近くの「かのこ」で美味しい刺身を食べて、13時から医療相談となった。
 ところで甑島の指定難病の認定者数は54人で、パーキンソン病と瘍性大腸炎が8人、後縦靭帯骨化症が5人、バージャー病、SLE、特発性血小板減少性紫斑病、広範脊柱管狭窄症がそれぞれ3人、脊髄小脳変性症、全身性強皮症、特発性拡張型心筋症、黄色靭帯骨化症、下垂体前葉機能低下症、クローン病がそれぞれ2人、ALS、重症筋無力症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー、もやもや病、皮膚筋炎/多発性筋炎、ベーチェット病、肥大型心筋症、特発性大腿骨頭壊死症、肺動脈性肺高血圧症がそれぞれ一人である。
 個別相談はお二人だった。
 最初は60歳代の浄土真宗大谷派のお坊さんで、筋強直性ジストロフィー(MyD)の従兄のことでの相談だった。このお坊さん、父親も寺を持たないお坊さんだったそうだが、この方も50歳を過ぎてから通信教育と短期研修で僧侶の資格を取ったということである。甑島の大谷派のお寺のお坊さんが亡くなり、現在自分がそのお寺でお務めをされているという。家族歴を辿ると、この従弟さんを含めて少なくとも8人がMyDのようである。一人暮らしで、家は一時ごみ屋敷のようだったが、指定難病に認定されてヘルパーさんが入るようになりいくらか綺麗になったと喜んでおられた。この病気特有の症状で、昼間から眠っていることも多く、地域の理解も得られていないようである。他に支援する人もいないので、このお坊さんが何かと面倒をみているということで奇特な方である。
 同じように60代の潰瘍性大腸炎と特発性股関節骨頭壊死の男性、両方とも南風病院で治療されていた。ずいぶん長い闘病生活で、「この歳では島には仕事もなくて・・・」と言われていたが、島特有の風土のなせるところなのか、話しぶりは明るくて救われる思いだった。現在は「トンボロの風」に通所しているという。独身で今後の生活に不安を抱えていたが、私も話を聞くだけしかできなかった。
 帰りはまた里港からとなったが、中村さんと嫁さんが港まで見送りに来てくれていた。
 (なお、甑島は薩摩川内市でした)。