Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

老衰多いと医療費低い(後)(2018/01/30) 

また同じ日の社会面には「長生きの秘訣 運動・絆・医療」という見出しで、茅ヶ崎市の活動などを詳細に紹介している。運動では、市による「転倒予防教室」の開催、「脳トレ運動」や「ちがさき体操」が行われている。「平坦な土地が多く、車で通れない路地が多い」
 ので、自転車や徒歩で移動する高齢者が多いという。また「祭りなどを通じて地域の繋がりが強い」という。市はかかりつけ医、看護師、介護職など多職種が集まる研修会を開催して、連携の強化を図っているという。
 この記事を読んで思い出したのが、森田先生の講演である。夕張市では平成19年(2007年)財政破たんにより市立病院の閉鎖が行われた。その結果、何が起こったか。病院がなくなって医療が大幅に縮小したのに、健康被害は生じなかった。死亡総数に占める「老衰」の割合が飛躍的に増えたというのである。病院の閉鎖当時は2.3%だったのに、平成24年には14.1%となっている。その理由に市民の死生観の変化をあげている。そして夕張の医療の変化として、一つが「きずな貯金」、二つ目が「市民の意識改革(予防に汗を流し、天命を受け入れる)」、三つ目が「生活を支える医療(訪問看護など)」が土台になっているという。
 意識改革では、延命治療について取り上げていた。
 「みとり」の問題にも言及していたが、鹿児島のいわゆる老人病院では今でも手足を縛られ定時的に胃瘻から栄養剤を注入されている病院がある。本人の希望でもなかったのに、家族と病院側の都合が優先して、そのような人権無視の状況になっている。夕張では不必要な延命処置は施されずに、本人の意思が生かされる終末医療に変化してきている。これが正しい「みとりの姿」で、死因の一番は「老衰」になっているということだった。訪問看護や訪問医療は離島など一部を除いて、ほぼ全国津々浦々に行き届いている。ただ財源との兼ね合いもあり、サービス過剰なども言われてきたので、予防に力を入れ、効率化していくことも大切になると思うことである。