高齢をどう生きるか(2018/01/24)
初春の「床屋談義」の一コマである。
「私たちは理容組合のボランティアで、年に3回ほど養護老人ホームなどの施設を訪問して散髪をやらせてもらっているのですが」と理髪師の井之上さんが切り出した。
「何人くらいで行かれんですか」と「正月っ頭」の叶わなかった私が続ける。
「大体20人くらいで、一人で4人ほどのお年寄りのカットなど行います。ところがいつも思うのですが、施設はどこも建物は立派になったけど、みんな元気がないというか、生気が感じられないのですよ。お話しできる人も、10人に一人くらいの割合なんです。他はみんな黙りっきりです」
「認知症の人もおられるかもしれないけど、やる気というか、生きる意欲を無くしているんですね。身体と生活の安全は保障されているものの、そのような刺激のない環境に置かれると、人間は誰でもそのようになるものです。やはり人間はちょっとしたことでもいいですので、働くことが大事なんだと思うんです。もっともヨーロッパなどの貴族階級では昔から労働は悪で、むしろ早い時期から引退して自由に好きなことに専念することが人間の本質だという考え方もあるようですが。日本でもまだ十分に働けるのに、グランドゴルフやジムに通うのはどうかと思いますがね」
「そういえば、先日、深夜の再放送(2017年11月29日のMBCテレビ、 お日さまに照らされて~私とふるさとの先輩たち~)でしたが、元気なお年寄りをインタビューしていました。アメリカ人のジェフリー・アイリッシュさんが川辺町に暮らす男女5人(84歳から94歳)の日常を撮影して、うまくその味を引き出していました。仕事も農家、左官、バスの運転手などさまざまでしたが、彼らの暮らしぶりに学ぶことは多いとジェフリーさんは話していました。どう生きるか、人とどう接するか、年をとっていく自分の体とどう対話するか。ふるさとの先輩たちの話に耳を傾け、その生き方を見つめるいい番組でした」
「私もたまたま観ていましたが、あの川辺のおばさんたちの喋るコテコテのかごんま弁の解るジェフリーさんも凄い人だと感心しました。本当に生き生きとしていましたね。そしてお年寄りが大切にされている、その知恵が生かされている。『あのおばさんの所に聞きに行けば、何でもよく知っているよ』という風に」。
さてこのジェフリー・S・アイリッシュさん、エール大学卒業のとんでもないエリートだが、現在は鹿児島県南九州市川辺町の山間にある土喰(つちくれ)集落、世帯数は20足らず、住民の平均年齢は80歳以上のこの集落の住民となっている。ここにはジェフリーさんが愛してやまない古き良き日本の生活が残っており、お互いを気遣い支え合がいしてやまない、昔ながらの“結いの心”が息づいているからだという。
私も学生時代に民俗学者の宮本常一(1907~81年)さんの著作を読み漁っていた時期があったが、代表作『忘れられた日本人』の英訳本を出版されたという。友人から「絶対に読むべきだ」と勧められたそうで、「あるく・みる・きく」という方法で、日本の漁村や農村の生活を記録した宮本先生の著作がジェフリーさんと重なる部分があったからだという。
「・・・もう、目からウロコが落ちました。昭和初期、日本の辺境の地で生きる日本人の人間臭さや冒険心、生活の知恵や工夫に感服しました。そういった普通の日本人がどれほど魅力的かを、多くの海外の人たちに知ってもらいたいと思ったのです」
「私たちは理容組合のボランティアで、年に3回ほど養護老人ホームなどの施設を訪問して散髪をやらせてもらっているのですが」と理髪師の井之上さんが切り出した。
「何人くらいで行かれんですか」と「正月っ頭」の叶わなかった私が続ける。
「大体20人くらいで、一人で4人ほどのお年寄りのカットなど行います。ところがいつも思うのですが、施設はどこも建物は立派になったけど、みんな元気がないというか、生気が感じられないのですよ。お話しできる人も、10人に一人くらいの割合なんです。他はみんな黙りっきりです」
「認知症の人もおられるかもしれないけど、やる気というか、生きる意欲を無くしているんですね。身体と生活の安全は保障されているものの、そのような刺激のない環境に置かれると、人間は誰でもそのようになるものです。やはり人間はちょっとしたことでもいいですので、働くことが大事なんだと思うんです。もっともヨーロッパなどの貴族階級では昔から労働は悪で、むしろ早い時期から引退して自由に好きなことに専念することが人間の本質だという考え方もあるようですが。日本でもまだ十分に働けるのに、グランドゴルフやジムに通うのはどうかと思いますがね」
「そういえば、先日、深夜の再放送(2017年11月29日のMBCテレビ、 お日さまに照らされて~私とふるさとの先輩たち~)でしたが、元気なお年寄りをインタビューしていました。アメリカ人のジェフリー・アイリッシュさんが川辺町に暮らす男女5人(84歳から94歳)の日常を撮影して、うまくその味を引き出していました。仕事も農家、左官、バスの運転手などさまざまでしたが、彼らの暮らしぶりに学ぶことは多いとジェフリーさんは話していました。どう生きるか、人とどう接するか、年をとっていく自分の体とどう対話するか。ふるさとの先輩たちの話に耳を傾け、その生き方を見つめるいい番組でした」
「私もたまたま観ていましたが、あの川辺のおばさんたちの喋るコテコテのかごんま弁の解るジェフリーさんも凄い人だと感心しました。本当に生き生きとしていましたね。そしてお年寄りが大切にされている、その知恵が生かされている。『あのおばさんの所に聞きに行けば、何でもよく知っているよ』という風に」。
さてこのジェフリー・S・アイリッシュさん、エール大学卒業のとんでもないエリートだが、現在は鹿児島県南九州市川辺町の山間にある土喰(つちくれ)集落、世帯数は20足らず、住民の平均年齢は80歳以上のこの集落の住民となっている。ここにはジェフリーさんが愛してやまない古き良き日本の生活が残っており、お互いを気遣い支え合がいしてやまない、昔ながらの“結いの心”が息づいているからだという。
私も学生時代に民俗学者の宮本常一(1907~81年)さんの著作を読み漁っていた時期があったが、代表作『忘れられた日本人』の英訳本を出版されたという。友人から「絶対に読むべきだ」と勧められたそうで、「あるく・みる・きく」という方法で、日本の漁村や農村の生活を記録した宮本先生の著作がジェフリーさんと重なる部分があったからだという。
「・・・もう、目からウロコが落ちました。昭和初期、日本の辺境の地で生きる日本人の人間臭さや冒険心、生活の知恵や工夫に感服しました。そういった普通の日本人がどれほど魅力的かを、多くの海外の人たちに知ってもらいたいと思ったのです」