Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬(2018/02/13) 

正直なところ、筋萎縮症に効果的な薬がこんなに早く製品化されるとは思っていなかった。SMA家族の会の副会長の大山有子さんは「絶望的だった治療が数年で可能となったことは、私たちに大きな希望をもたらしてくれた」と述べると共に、「社会の理解をうるためにも。投与する医師や私たち患者側にも倫理観が問われている」と書かれている(日経2月12日)。
 脊髄性筋萎縮症(SMA)は比較的ポピュラーな神経疾患で、南九州病院にも多くの患者が入院していた。SMAは国内での推定有病率が10万人当たり0.5~1.0人で、小児慢性特定疾病(成人では指定難病)に認定されている。
 発症年齢などによってI~IV型に分類され、筋緊張低下や筋力低下、筋萎縮が一般的な臨床症状であるが、発症年齢によって症状はずいぶん異なっている。病院は第5染色体に病因遺伝子を持つ劣性遺伝性疾患であるが、成人発症のSMA IV型は遺伝子的に複数の成因が混在すると考えられている。すなわち染色体5q領域でのSurvival Motor Neuron 1(SMN1)遺伝子の欠失または突然変異によってSMNタンパク質の欠乏およびそれに付随する脊髄全角での運動ニューロンの変性を起こすと言われている。
 一方、SMN1遺伝子の近傍に位置し、少量のSMNタンパク質産生を担うSMN2遺伝子がある。SMN2遺伝子は、SMN1遺伝子と相同で、SMN2遺伝子のコピー数が、SMAの臨床表現型の最も重要な予測因子として知られている。発症時期が早く、SMNタンパク質の算出が少ないほど、疾患は重度である。
 今回、国内で初めて承認されたスピンラザはアンチセンス核酸医薬品で、SMN2遺伝子のmRNAスプライシングパターンを修正することで、SMN2遺伝子から算出される完全長タンパク質の量を増加させ、SMA患者の運動機能の改善や呼吸障害などによる死亡リスクを軽減するという。同剤は、遺伝子検査により、SMN1遺伝子欠失または変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者に投与可能である。
 乳児型SMA治療薬として2017年7月3日に承認され、8月30日の薬価収載と同時に発売。同年9月22日には乳児型以外のSMAへの効能追加を受け、全ての型のSMA治療への使用が可能になった。
 ただ、認められた薬価が12mg(5mL)1瓶でなんと約932万円もする。最初の1年で約5592万円、それ以降は年間約2796万円の費用がかかるといわれている。日本はまだ安い方で、米国は1瓶約1620万円、ドイツは1瓶約1297万円だという。病院で薬を持ち運ぶときには細心の注意が必要となる。
 私は2月25日の「世界希少・難治性疾患の日」に「何か話を」と頼まれたので、この薬も紹介したいと考えている。