Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

内田康夫さん、亡くなる(前)(2018/04/09) 

名探偵・浅見光彦シリーズで知られる人気作家、内田康夫さんが3月13日、敗血症のため東京都内で死去したという。83歳ということである。私も「アサミスト」と称するほどのファンではなかったが、飛行機に乗る時には文庫本をよくしのばせていたし、テレビの浅見光彦シリーズは欠かさずみていたものである。
 いつごろだったか詳細は忘れてしまったが、朝日新聞の合志さんと、ある出版社の編集部の女性と食事したことがあった。「内田さんと西村(京太郎)さんはゴーストではなく、ちゃんと自分で書いていらっしゃいます」と聞いたことあった。逆に言うと、「流行作家の中にはゴーストが多い」と聞いてビックリしたものである。
 内田さんの書かれる作品は、生真面目な性格がストーリーにもよく反映されている。また描かれている人物には温かみがあり、読んだ後やドラマを観終わった時にスカッとしたほのぼのとして気持ちにさせてくれる。
 訃報で、歴代の浅見光彦を演じた俳優も追悼のコメントを寄せていた。その中で、鹿児島県出身の沢村一樹は「ウイットとユーモアに満ちあふれた作品は、内田先生そのものでした。お見舞いに行った際も体調の優れない中、みんなを笑わせ和ませる姿に、浅見が重なったのを思い出します」としのんでいた。
 よく「偶然」の話をするが、今回も不思議な一致に自分でビックリしている。
 内田さんの単行本は、私の部屋の本棚の中にも何冊か無造作に置かれている。亡くなってから暇な時間に、追悼の意味も込めて一冊の単行本を手に取って開いてみた。「記憶の中の殺人」というタイトルで1998年に一刷が刊行されているが、物語の内容はすっかり忘れていた。
 第一章の「他人の墓に花を飾らないで」を読み進むうちに驚いた。
 軽井沢の内田康夫先生から団子屋の平塚亭に呼び出された僕は、内田家の墓に供えられた謎の花の調査を頼まれた」で始まるが、この僕こそ浅見光彦で、内田の分身と言うことになる。
 ・・・「何がって・・・つまり、お墓はいつごろ作るご予定で?」
 「いや、墓はあるよ」
 「えっ、先生のお墓のことですよ」
 「ん?なんだ僕の墓のことか。ああ、僕の墓もちゃんと用意してある。僕みたいな憎まれっ子は、死んだあと、墓を建ててくれるかどうか、保証の限りでないから、自分で建てておいた。といっても富士霊園にある『文学者之墓』という、お墓の長屋みたいないい加減なものだけどね。もう7,8年前になるかな。・・・隣が長谷部日出雄と楢山芙二夫、ご近所には黒柳徹子氏などもいて、けっこう賑やかだ」
 「淋しいというのはそういう意味では・・・えっ、それ、みんな生きている人ばかりじゃないですか」
 「そうだよ。生前建墓とか良妻賢母とかいうやつだな、ははは」
 センセは例によって下らないシャレを言った。・・・