Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

退官記念式典(後)(2018/04/05) 

その他にも祖母からは「人の振り見て我が振り直せ」とか、「情けは人のためならず。巡り巡りて己がため」などの箴言で諭されたことをよく覚えているという。
 ノーベル賞につながった業績として、土壌から分離した菌株が線虫を殺す働きがあることがわかり、この物質こそが「エバーメクチン」ということになる。これからアメリカの製薬大手メルク社が動物薬市場で圧倒的なシェアを獲得、大村先生も特許料収入として200億円近くをもたらすことになる。当初メルク社は3億円で全ての権利を貰えないかと提案してきたが、「売り上げのある比率をメルクが北里研究所に支払う方式にすべき」と主張したことが、その後の膨大な利益をもたらすことにつながる。このお金で、北里研究所メディカルセンター病院の建設、韮崎大村美術館、白山温泉、山梨科学アカデミーの設立など、数々の社会奉仕に役立てることができた、即ち社会貢献の原資である。
 講演を聴きながら学問の世界以外でびっくりしたのは、先生の運動神経である。韮崎高校でスキーを始めて、大学時代までクロスカントリーの長距離の部で、県大会で優勝するなど輝かしい成績を収めている。また北里大学の教授時代、不眠やめまいなど身症的な病気になった。そこで心療内科を受診したら、パチンコかゴルフで気分転換を勧められた。そこでゴルフにのめり込んで、いろいろ工夫しながら練習した結果、ハンディキャップ5まで上達したという。小柄であるが、常に工夫する姿勢がいい結果につながったのだろう。
 もう一つは、毛筆で自ら書かれた色紙を披露された。実に達筆な筆遣いで、「至誠惻怛(しせいそくだつ)」などの四文字熟語である。この言葉は、誠を尽くし、いたわりの心を持って人に接する。そうすれば必ず道は拓けるという意味で松山藩の財政危機を救い、藩政改革を成し遂げた山田方谷が河井継之助に贈った言葉だそうである。
 最後に、「私の心得」として、黄金のトライアングルを挙げられた。
 三角形の真ん中に趣味を、そしてそれぞれの頂点に健康管理(習慣)、一期一会(恕)、研究推進・社会貢献(人材育成と実践躬行)を挙げ、3つのバランスの中で生きている、と示された。功成りていえる言葉である。