時空を超えて(前)(2018/07/30)
「時空を超えて」というタイトルにしたが、ALSの小川内さんが亡くなられて25年が経つ。ALSや筋ジストロフィーなどの神経難病患者さん、あるいはその家族とは結果的には「時空を超えて」長い付き合いとなることが多い。
今回は北山診療所での診療の機会に、木津志にお住いの小川内さんの奥さんにお会いして、ご焼香もさせてもらいたいと思って毛利先生にお願いしたのである。
朝の北山診療所での診察の後、昼から予定されていた木津志出張診療所での診察と二人のお年寄りの訪問診療が終わり、最後に小川内さんのご自宅に連れて行ってもらうことになった。昔の古い友人に会えるような気持になり、なんだか楽しい遠足のような気分である。
山の中の細い道を通り抜け、北山診療所の看護師が運転してくれる車の助手席の車窓から外を眺めると、あの頃と変わったところと変わらないところがあり、30年ほど昔のことを思い出している。小川内さんのご自宅への400メートルほどの狭い取り付け道路はそのままであるが、そこまでの道はきれいに舗装されている。同行の看護師さんの話では、冬はこの取り付け道路が雪に埋もれて通れないこともあったという。
田んぼの前に、昔と変わらない家が見えてくる。荷台のある小さな軽自動車が庭先に停車しているところをみると、垂水の息子さんが来られているのだろうか。家の庭先に車を乗り入れると、案の定、その昔見覚えのある息子さんが笑顔で納屋から出て来られる。玄関から中に入ろうとした時に、縁側先の庭の端っこの池に水がなく、底が干上がっていることに気づく。昔はこの池には山から清流が注がれ、大きなコイが泳いでいた。小川内さんがよく気管切開部のレチナを外して、この水で洗浄していたものである。「父が亡くなった時に、どうしたのかコイが全部死んでしまって、それ以降、水もためておりません」と話される。
上り框に腰を下ろして靴を脱いでいると、小川内さんの奥さんのあやこさんが台所から顔を出される。88歳になられるということだったが、実に若く見える。後で息子さんは「昨日、町で食事をしていたら、夫婦と間違えられたんですよ」と笑いながら話されていた。
「とりあえず、ご焼香させてください」と居間の仏壇の前に腰を下ろして手土産を供える。仏壇には左に小川内さんのお父さん(107歳で亡くなる)、右に小川内さんの位牌が置かれている。床の間に目を転じると、坂下君が子供さんと県民の森で遊んでいる写真が置かれている。坂下君は南九州病院から大学に異動した直後に、ジムのプールで不慮の事故死をしてしまった。小川内さんは坂下君を命の恩人(救急車で病院に運ばれた時に、挿管してくれた)として考えていたので、「代わってあげられるものなら代わってあげたい」とよく話されていたものである。
仏壇の前であやこさんとの写真を、息子さんに撮ってもらう。「また会えるなんて、思ってもいませんでした」と目頭を押さえられる。何度も何度も目頭を押さえられる。
今回は北山診療所での診療の機会に、木津志にお住いの小川内さんの奥さんにお会いして、ご焼香もさせてもらいたいと思って毛利先生にお願いしたのである。
朝の北山診療所での診察の後、昼から予定されていた木津志出張診療所での診察と二人のお年寄りの訪問診療が終わり、最後に小川内さんのご自宅に連れて行ってもらうことになった。昔の古い友人に会えるような気持になり、なんだか楽しい遠足のような気分である。
山の中の細い道を通り抜け、北山診療所の看護師が運転してくれる車の助手席の車窓から外を眺めると、あの頃と変わったところと変わらないところがあり、30年ほど昔のことを思い出している。小川内さんのご自宅への400メートルほどの狭い取り付け道路はそのままであるが、そこまでの道はきれいに舗装されている。同行の看護師さんの話では、冬はこの取り付け道路が雪に埋もれて通れないこともあったという。
田んぼの前に、昔と変わらない家が見えてくる。荷台のある小さな軽自動車が庭先に停車しているところをみると、垂水の息子さんが来られているのだろうか。家の庭先に車を乗り入れると、案の定、その昔見覚えのある息子さんが笑顔で納屋から出て来られる。玄関から中に入ろうとした時に、縁側先の庭の端っこの池に水がなく、底が干上がっていることに気づく。昔はこの池には山から清流が注がれ、大きなコイが泳いでいた。小川内さんがよく気管切開部のレチナを外して、この水で洗浄していたものである。「父が亡くなった時に、どうしたのかコイが全部死んでしまって、それ以降、水もためておりません」と話される。
上り框に腰を下ろして靴を脱いでいると、小川内さんの奥さんのあやこさんが台所から顔を出される。88歳になられるということだったが、実に若く見える。後で息子さんは「昨日、町で食事をしていたら、夫婦と間違えられたんですよ」と笑いながら話されていた。
「とりあえず、ご焼香させてください」と居間の仏壇の前に腰を下ろして手土産を供える。仏壇には左に小川内さんのお父さん(107歳で亡くなる)、右に小川内さんの位牌が置かれている。床の間に目を転じると、坂下君が子供さんと県民の森で遊んでいる写真が置かれている。坂下君は南九州病院から大学に異動した直後に、ジムのプールで不慮の事故死をしてしまった。小川内さんは坂下君を命の恩人(救急車で病院に運ばれた時に、挿管してくれた)として考えていたので、「代わってあげられるものなら代わってあげたい」とよく話されていたものである。
仏壇の前であやこさんとの写真を、息子さんに撮ってもらう。「また会えるなんて、思ってもいませんでした」と目頭を押さえられる。何度も何度も目頭を押さえられる。
