Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

がんの見落とし(後)(2018/09/12) 

それとは別に、健診などで病変の初期病変の見落としも気になるところである。この場合は、見落としという言葉は、医師には酷過ぎるかもしれない。高齢社会が進行し、人は長生きすると二人に一人ががんになる時代になった。
   毎日、健診で胸部写真などを見ているが、結節状の病変をがんの初期病変なのか、血管の切り口なのか、迷う写真はいくらでもある。がんと確定してから遡って、胸部写真を見なおすと「やっぱりがんだったのか」と思わせる場合はいくらでもありそうな気がする。そのため疑わしい場合はCTなどの精密検査をすればいいのだが、時間やコストを考えると簡単には事は運ばない。せいぜい、「来年も忘れずに健診を受けてください」と言うことになる。
   先日PETの結果説明で、次のようなことがあった。
   健診者は60代の女性で、沖エラブ島で農業をされている。いかにも人柄のよさそうで、私の説明にも穏やかな笑顔で対応される。PETの画像で、縦隔に2個ほど集積(赤く見える)を認める。時々肺炎を起こして、地元のかかりつけ医で治療している。胸部CTでは肺炎によると思われる画像は認めるが、明らかな腫瘍影はない。腫瘍マーカーなども全て基準値内にある。放射線科医は「呼吸器内科で精密検査を」と書かれている。
   このリンパ節と思われる集積像が単なるリンパ腺炎か、腫瘍の転移像か、あるいはサルコイドーシスなどの病変を示しているのかは現在ではわかりにくい。呼吸器内科医もこれ以上の精密検査の手段はそんなに持たないのではないだろうかと思われる。
   いろいろな状況を考えて、町ではPET検査に5万円の補助があるということで、「来年また検査に来て下さいませんか」と言うことで別れた。それでも私のなかにも不安な気持ちは残っていた。
   翌日、健診者がやはり不安になって、消化器の検査が予定されていたこともあって消化器内科を受診した。そこで消化器内科の先生が呼吸器内科に紹介状を書いてくれたということを担当者から聞いた。私としては責任転嫁?ができたようで、内心ではホッとした。ただ健診者は、時間とお金と不安が増したことになる。