Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

超高額医薬品(2018/10/26) 

スウェーデンのカロリンスカ医科大は10月1日、ノーベル医学生理学賞を京都大の本庶(ほんじょ)佑(たすく)特別教授(76)と米テキサス大MDアンダーソンがんセンターのジェームズ・アリソン教授(70)に贈ると発表した。2人は、免疫をがんの治療に生かす手がかりを見つけた。新しいタイプの治療薬の開発につながり、がん治療に革命をもたらしたことが評価された。
 ところで、本庶教授の研究は高額医薬品のオプジーボの開発につながっている。日経の9月29日の一面では「超高額医薬品 迫る『第二波』」という大見出しでこの問題を論じている。小見出しとして、「血病薬1回5000万円 年内にも上陸、保険適用に慎重論」を読めば、大まかな内容は把握できる。
 今回登場した高額医薬品はキムリア(白血病の治療薬)は1回がなんと4000万から5000万円、イエスカルタ(大細胞型B細胞リンパ腫の治療薬)は1回4200万円、ラクスターナ(遺伝性網膜疾患治療)が両目で9600万円だという。
 今後の問題は超高額の薬価が医療保険に大きな影響を与えることである。
 現役世代の薬代を含む医療費の自己負担はかかった医療費の3割、そして患者負担には月額上限を定める高額療養費制度がある。例えばキムリアの場合、薬価が5千万円だとすると、年収370万から770万円未満の人の自己負担は、月に約60万円で済む。残りの4940万円が保険から給付される
 海外ではどのような扱いにしているか。
 英国ではイエスカルタが高すぎると公的保険から外すことを決めた。同国では「健康寿命を1年延ばすのにいくら費用が増えるか」を基準に薬の費用対効果を調べ、2~3万ポンド(290万から435万)を超える薬は公的医療保険から外すなどしているという。
 財務省は10月9日、財政制度等審議会の分科会で中期的な社会保障改革案を示し、新たに登場した高額医薬品は経済性に応じて公的医療保険制度の適用外にすることも検討するように提案した。
 新薬が承認されるとほぼ自動的に保険適用となる現状を見直し、今後は費用対効果を検証するよう求めた。高額薬が保険から外れると財政は助かる半面、診療代は全額自己負担となって患者にのしかかる。薬価を巡っては消費税増税に伴い実施する19年度改定でも、実勢に合わせた単価引き下げを求めている。
 この問題、新薬開発のインセンティブ確保、患者の希望、医療財政の維持、この3つを同時に満たす解を探し出すことは難しく、いずれも結論の出しがたい問題である。