Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

半分、青い(前)(2018/10/24) 

朝の連続テレビ小説「半分、青い」が9月で終了した。
 4月からほとんど欠かさずにBSでの7時半からの時間帯に、その場足踏みをしながら観ていたのではないだろうか。
 さてこのドラマの筋書きは、1971年生まれのヒロイン・鈴愛(すずめ)が高度経済成長期の終わりから現代までを駆け抜けるという、半世紀の物語である。1971年というと私の大学卒業の年にあたるわけで、時代を重ねあわせながらさまざまな事件や出来事、また部屋の調度品や流行の品々を懐かしく思いながらみていた。時代を共有できることは、何事でもうれしいことである。
 作品の評価として前篇と後篇に分けると、個人的には竜頭蛇尾という感じがする。前半の方が丁寧で心をひきつけられる場面が多く、後半になるとテンポが速くなり、現実味の感じられない筋立ても多くなったように思えた。一日見そびれると、置いてきぼりにされそうな早い転換だった。
 ただ全体としては、深刻な内容が多いにもかかわらず、それなりに軽いノリで楽しませてもらった。バブル期や東日本大震災など、戦後のさまざまな事件をちりばめており消化不良の感じがなくはない。
 この作品の脚本は、北川悦吏子さんである。彼女自身がいくつもの難病と闘いながら、この作品を書いておられるということで、その経験が生かされているし、彼女の病気の自叙伝といいてもいいようである。
 晴(鈴愛の母)の腎臓病にはじまって、鈴愛の左耳失聴、祖母のピンピンコロリ、祖父の一瞬のボケ、律の喘息、瀕死の犬、秋風の癌、元住吉の自殺未遂、祖父のピンピンコロリ、和子の心臓病、晴のがんと、さまざまな生病老死が描かれている。
 まずヒロインの楡野鈴愛(にれのすずめ、永野芽郁さん)は9歳の時におたふくかぜがもとで左耳の聴力を失うが、これは北川さん自身の体験にもとづいている。
 「傘を差したときに、雨の音を聞いて、左側だけ雨が降らないなと思って。そのときになぜか分からないけれど『半分、青い。』というタイトルが浮かびました。とてもかっこいいと思った。ドラマはそこからのスタートでした」。
 北川さんの左耳が聴こえなくなったのは2012年11月だった。突発性難聴を疑い、病院で受診。失聴の原因は良性の脳腫瘍である聴神経腫瘍だった。北川さんはガンマナイフ(開頭手術をせずに病巣を取り除く放射線治療)による治療を受けた。聴力が温存されるケースもあるが、北川さんの左耳は聴こえるようにはならなかった。
 「何で私が?」と不条理を噛みしめながら、一方でこうも思った。「何かを失い、やがて乗り越える感覚は、きちんと残しておこう」。自らの心の内を観察し、感情をメモに書き残した。メモした言葉は「半分、青い」でそのまま生きた。
 自分の病気を客観化できる精神は凄いことだと思う。