Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

南大阪難病ケア・レジデントカンファレンス(後)(2015/07/01) 

そこで私も講演では、岸本先生の「ほんまもん」に共感する部分も多かったので、人材の育成と社会貢献について私なりの考えを述べることにした。人生を振り返ってみると、たまたまやご縁で人生の選択をしていることが多く、岸本先生の皮膚科と同じようにどちらかというとマイナーな神経内科を選択したのも「偶然」ともいえる。しかし「結果的にはいい師と運にも恵まれ、充実した医師人生を歩んでこれたように思う」と総括した。
 神経内科を目指している後期研修医(レジデント)の若い医師が多かったので、まず次のような部分から切り出した。
 入局したころに井形教授から「全く同じ症例はないのだから、一例一例が報告になる」と言われたので、ちょっとしたものでも症例報告としてまとめて、論文として発表するように心がけた。また永松助教授からは「主治医が患者さんにとっては一番信頼のおける存在だから、入院患者さんのベッドサイドに毎日最低一度は顔を出しなさい」と言われたので、患者さんを持っていた頃は朝夕一度ずつはベッドサイドに顔を出すように心がけた。
 そして井形教授の信条でもある「前向きな考え方」や「頼まれたことは断らない」という教えは、人生のさまざまな岐路で役だったように思う。私は生来引っ込み思案で、井形教授と出会うまではマイナス思考を絵にかいたような性格で、いつも受け身の人生を送っていた。井形教授との出会いが私の人生を変えたといっても過言ではない。また川渕三郎(サッカーの元チェアマン)の、「弱音を吐かない、泣き言を言わない、愚痴をこぼさない、後を振り返らない」は箴言だとおもう。人間は、汗をかいて苦労したことだけが糧になる。
 また人材についてはいつものように、「スキル(技能)とやる気」を兼ね備えた人財になって欲しいこと、やる気がなければスキルはあっても、ただそこに在るだけの人在になってしまうこと、そして最近の研究からわかってきたこととして、スキルの中には認知スキル(知力や学力など)と非認知スキル(性格など)があるが、後者の非認知スキルが最も重要であることが明らかとなっていることを話した。
 非認知スキルの構成要素にはいくつかあるが、なかでも「一生懸命に真面目に努力する」ことが第一に挙げられている。日本では真面目さは「クソ真面目」などと揶揄されることもあるが、やはり人が社会生活を営む上でのもっとも重要なことは「真面目さ」なのである。
 次に「社会貢献」についても触れた。医療や福祉など、人を相手にする仕事は、自分たちの日ごろしている仕事が何らかの意味で社会貢献につながっているのだという気持ちがなければいい仕事はできないし、持続もしない。よく使われる例として、ヨーロッパの寓話を紹介した。
 人がある町を歩いていたとき、3人の職人に出会います。それぞれに、「何をしているの」と聞いたときの答えが
 1)「見ればわかるだろう、レンガを積んでいるんだよ」
 2)「レンガを積んで、壁を作っているんだよ」
 3)「レンガで壁を作って、学校を建てて子供たちを喜ばせる仕事をしているんだよ」
 すなわち同じように仕事をしていても(3)のように、何か目的があってこそいい仕事ができるのである。
 最後に新井和宏さんの言葉を紹介した。「どこまでも謙虚に、 誰よりも強く想い、日々の小さな努力を積み重ねる」ことが大切である。
 鹿児島に帰ってから企画してくださった狭間先生から「私自身も大変勉強になりましたし、若い者も大変感動を受けていました」というメールを頂いてホッとした。