Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

シンプルライフへのこだわり(2016/08/10) 

イチローが大リーグ通算3000本安打にあと10本と迫っている(7月5日現在、8月8日達成)。海外で活躍している日本人アスリート、錦織や松山が時に大きなスランプに直面している姿を見る時、イチローの安定性は際立っている。その理由がどこにあるのかを考えると、私は「ルーチンを基本にしたシンプルライフ」に求めることができるように思う。
 あるテレビ番組だったかと思うが、彼の「シンプルライフ」へのこだわりは尋常ではない。毎日の食事(朝はカレー)、球場への道筋など全て同じようにしている。ベンチから出てウェイティングサークルに入りそして打席にはいる時も、ピッチャーの投げる球に立ち向かうまでいつも同じ動作を繰り返している。いつ頃からこのようなスタイルを踏襲するようになったのかは知らないが、きっと健康を維持し好不調の波を減らすにはこのスタイルがもっとも適していることを経験の中から会得したのではないだろうか。
 不世出の大打者イチローの生活スタイルと私の生活習慣を比較することにははばかりがあるのだが、私も毎日の生活習慣はできるだけ変えないようにしている。私の場合は面倒くさがり屋で、変わらない生活習慣だと何も考えずに行動できるから好都合であるというにすぎない。
 朝起きる(4時)、新聞を読みながら朝食をとる、家を出る、院内ランを発信する(毎朝、1600字を目途に書いてきた)、テレビ体操をする(6時25分から10分間)、コーヒーを飲むなど、ほとんど5分のずれもない生活を続けてきた。南九州病院と南風病院では車に乗っている時間が違う(最近は、晴れた日は歩いて通勤している)ので多少のズレはある。そのような生活を送ることで、自らの体調の小さな異変にも早く気付くことができるのではないかと考えている。もちろんこのような生活スタイルが可能になったのは院長になって(平成10年)からで、入院患者を持ったり当直業務が入るとそういう訳にはいかなくなる。
 これも飛躍だと思うのだが、「小さな異変に早く気付く」ということでは、「看護はタペストリーだ」にも通じるように思う。看護の仕事の一部は「患者の食事や排泄、入浴、移動などの日常生活の単純にみえる繰り返しの援助であるが、この援助こそがタペストリーを織り上げていくときの一本一本の織り糸で、そんな日常での鋭い観察があってはじめて患者のベースラインを把握できてちょっとした患者の変化に気づき、重大な結果を事前に予測できる」ものだと思う。健康な生活とは、健康な状態が昨日と変わらないことを意味する。ベッドサイドでの異変を一早くキャッチできるのは、看護師の細やかな観察力に依ることが多い。そのような看護を期待したいが、最近は入院期間が短くなり記録に追われる看護ではなかなか難しいことだと思う。
 古希を前にしてシンプルな暮らしの延長線上にある「断捨離」も実践していきたいのだが、こちらの方はモノがたまっていくばかりでまだまだである。