Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

また縄文人が弥生人に(前)(2016/10/25) 

私自身、もともと酒が好きな方だから、酒飲みには寛大で、酒に溺れてしまう気持ちも少しはわかる。PETの結果説明でも、酒飲みか、そうでないかは肝機能の数値からある程度推察できる。γ-GTPの高い人には「適量にしてください」と言うのだが、この適量という言葉が曲者で、それぞれ自分に都合のいい「私の適量」を決めている。適量のタガが外れると過量になり、依存症に陥ってしまう。悪酔いしないし量もこなせる人がアルコール依存症にならないというのは大間違いで、「いくら飲んでも酔わない」人の方が依存症になりやすい。
 内閣府は9月8日、アルコール依存症に関する世論調査の結果を発表した。依存症が疑われる場合について、9割近くが相談の必要性を感じていたが、3割超は具体的な相談先を知らなかった、という。厚生労働省の調査によると、全国で109万人が依存症と推定されている。依存症についての知識はばらつきがあり、「飲酒をコントロールできない精神疾患」と68.5%が認識していたが、「女性の方が短期間で発症する傾向がある」を知っていたのは19.7%、「お酒に強い人ほどなりやすい」は9.8%にとどまった。
 さてアルコール中毒の原因物質はアセトアルデヒドであるが、そのメカニズムについて簡単に触れる。
 飲酒により体内に入ったアルコール(エタノール)は、胃や小腸から吸収され肝臓内のアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドへと分解される。アセトアルデヒド脱水素酵素は肝臓内においてアセトアルデヒドを酢酸に分解する。アセトアルデヒドは毒性が強く、悪酔い・二日酔いの原因となる。つまりアセトアルデヒド脱水素酵素の活性が弱いということは、毒性の強いアセトアルデヒドが体内で分解され難く、体内に長く留まるということを意味する。
 このアルコールを分解する能力の差は、 遺伝子(具体的には酵素)によって決まり、 アルコールに強い人と弱い人では、およそ75倍の差があり、この個人の遺伝子(酵素)の違いはアルコールに対する体質となり、二日酔い対策、アルコールの飲み方、アルコール中毒対策も少しずつ異なってくる。
 お酒が楽しめる人は慢性アルコール中毒になりやすい。お酒を最も楽しめる人はアルコールの分解能力が弱く、アセトアルデヒドの分解能力が強い人である。アルコールによる気持ちの良い時間が長く続き、 毒性のあるアセトアルデヒドを素早く分解してくれるからである。ただし、このタイプはお酒を飲むことが非常に楽しいため、慢性アルコール中毒になりやすいという統計があり、 反対にアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性が弱い人はアルコール依存症になりにくいというメリットもある。