「それはないよ!」と言いたい判決(2017/04/04)
昔、ある高名な弁護士から聞いた言葉だが、「民事裁判では事実の正しさが争われるわけではない。医師は勝訴、敗訴で一喜一憂するが、裁判というものは51/49で決まることが多い。賠償額もさじ加減のようなものだ」
それにしてもこの裁判官の「さじ加減」には納得がいかない。「それはないよ」と言いたい。
2017年3月29日、南日本新聞朝刊に次のような記事が載っていた。
「パン詰まらせ80歳窒息、施設に4000万円賠償命令(鹿地裁)」という見出しである。
その詳しい内容は「この80歳の男性は2014年1月、青雲荘に短期入所。ロールパンを食べた約1時間後、体調が急変、心肺停止状態に一時なった。喉から約5センチのパンの塊が出てきた。男性は低酸素脳症を発症し、今も意識は戻っていない」。鎌野真敬裁判長は判決理由で、男性が噛む力や飲み込む力が弱まっており、家族から「食べ物は一口大にしてほしい」と施設側に要望していたと指摘。朝食でロールパンをそのまま提供した施設側に「小さくちぎる義務があった」と責任を認めた。
正直に言ってこの賠償額には驚くと共に、80歳という年齢(事故当時は77歳か)を考えると、ちょっと納得がいかないものがある。詳細はよくわからないが施設側によっぽどの大きな過失があったということだろうか。「家族からの要望があったのに、そのまま提供した」という過失のみが新聞には書かれている。
一般的には利用者(患者)の嚥下機能のアセスメントをきちんと評価していたか、かねてから嚥下の悪い場合人には、職員の目の届くところで食事をさせるなどの配慮ができていたか、誤嚥した後の対応などが裁判の争点となる。
以前、私が務めていた国立病院機構病院でも、似たような事故で医療事故調停委員会が開かれたことがあった。
機構のある病院で、ショートステイに来られた乳児が食物を誤嚥して肺炎を起こして亡くなるという事故があった。家族が日常食べさせるときには要領をよく心得ているが、病院では初めてのことであり、また同じ人がかかわるわけではない。それだけに、リスクは当然のこと高くなってしまう。このケースは結局提訴され、示談で解決したのではなかっただろうか。
またある機構病院では「胃内容物の誤嚥による呼吸不全事案」というものがあった。
79歳のびまん性レービ小体型認知症の患者が、胃内容物の気管支への逆流により窒息死したもので、医師や看護師の「注意義務違反」があったとして提訴された。この女性は20年ほど前からパーキンソン病の診断で、近くの病院で外来通院を受けていたが、2年ほど前に体重減少や脱水でこの病院に入院している。当初は経口摂取していたが嚥下不良のため、入院後すぐに経鼻経管栄養(流動食)となっていた。窒息したのが午前6時過ぎで、気管内挿管までにやや時間を要したこと、そして「誤嚥による気管内閉塞を防ぐために、経管栄養ではなく『胃ろう』を造設すべきではなかったか」というのが提訴理由になっていた。
ただこの判決がまかり通ると、病院や施設では経口摂取を控えるようになり、折角胃瘻造設が適切な基準になりつつある状況に水を差してしまうのではないかと危惧される。
この6月に予定されている鹿児島セイフティマネジメント研究会では「摂食嚥下」をテーマにシンポジウムと、特別講演は「摂食・嚥下障害における医療安全」というタイトルで野崎園子先生にお願いしている。あまりにも時宜を得たテーマとなってしまった。
それにしてもこの裁判官の「さじ加減」には納得がいかない。「それはないよ」と言いたい。
2017年3月29日、南日本新聞朝刊に次のような記事が載っていた。
「パン詰まらせ80歳窒息、施設に4000万円賠償命令(鹿地裁)」という見出しである。
その詳しい内容は「この80歳の男性は2014年1月、青雲荘に短期入所。ロールパンを食べた約1時間後、体調が急変、心肺停止状態に一時なった。喉から約5センチのパンの塊が出てきた。男性は低酸素脳症を発症し、今も意識は戻っていない」。鎌野真敬裁判長は判決理由で、男性が噛む力や飲み込む力が弱まっており、家族から「食べ物は一口大にしてほしい」と施設側に要望していたと指摘。朝食でロールパンをそのまま提供した施設側に「小さくちぎる義務があった」と責任を認めた。
正直に言ってこの賠償額には驚くと共に、80歳という年齢(事故当時は77歳か)を考えると、ちょっと納得がいかないものがある。詳細はよくわからないが施設側によっぽどの大きな過失があったということだろうか。「家族からの要望があったのに、そのまま提供した」という過失のみが新聞には書かれている。
一般的には利用者(患者)の嚥下機能のアセスメントをきちんと評価していたか、かねてから嚥下の悪い場合人には、職員の目の届くところで食事をさせるなどの配慮ができていたか、誤嚥した後の対応などが裁判の争点となる。
以前、私が務めていた国立病院機構病院でも、似たような事故で医療事故調停委員会が開かれたことがあった。
機構のある病院で、ショートステイに来られた乳児が食物を誤嚥して肺炎を起こして亡くなるという事故があった。家族が日常食べさせるときには要領をよく心得ているが、病院では初めてのことであり、また同じ人がかかわるわけではない。それだけに、リスクは当然のこと高くなってしまう。このケースは結局提訴され、示談で解決したのではなかっただろうか。
またある機構病院では「胃内容物の誤嚥による呼吸不全事案」というものがあった。
79歳のびまん性レービ小体型認知症の患者が、胃内容物の気管支への逆流により窒息死したもので、医師や看護師の「注意義務違反」があったとして提訴された。この女性は20年ほど前からパーキンソン病の診断で、近くの病院で外来通院を受けていたが、2年ほど前に体重減少や脱水でこの病院に入院している。当初は経口摂取していたが嚥下不良のため、入院後すぐに経鼻経管栄養(流動食)となっていた。窒息したのが午前6時過ぎで、気管内挿管までにやや時間を要したこと、そして「誤嚥による気管内閉塞を防ぐために、経管栄養ではなく『胃ろう』を造設すべきではなかったか」というのが提訴理由になっていた。
ただこの判決がまかり通ると、病院や施設では経口摂取を控えるようになり、折角胃瘻造設が適切な基準になりつつある状況に水を差してしまうのではないかと危惧される。
この6月に予定されている鹿児島セイフティマネジメント研究会では「摂食嚥下」をテーマにシンポジウムと、特別講演は「摂食・嚥下障害における医療安全」というタイトルで野崎園子先生にお願いしている。あまりにも時宜を得たテーマとなってしまった。
