Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

新医局員歓迎会(後)(2017/05/19) 

かって私は院長として、毎年3月で病院を後にする職員に、いつも「人間到る処青山あり」という言葉を贈ってきました。「人間」はじんかんとも読むこともあるようです。この言葉は幕末の僧、月性(げつしよう)の「清狂遺稿」によるものだそうですが、人はどこで死んでも青山(=墳墓の地)とする所はある。故郷を出て大いに活躍すべきである、との意だそうです。個人的には「単純に、置かれた場所で頑張りなさい」というような意味で使ってきました。
         昨年89歳で亡くなりました渡辺和子さんは、あの2:26事件で当時陸軍の教育総監だった父が青年将校に襲撃され、43発の銃弾で命を落とした惨劇をわずか1mほどの距離から目の当たりにしていました。その時はまだ9歳でした。その後、36歳という若さで岡山県にあるノートルダム清心女子大学の学長に就任しておられます。
         2012年に発刊された「置かれた場所で咲きなさい」という本はベストセラーとなりました。
         「すべてが順風満帆な人生なんて、あるわけがない」、「現状に完全に満足できるはずはない」、そう分かってはいても、ついつい、不満を述べたくなってしまうもの。「こんなはずじゃなかった」、「もっと活躍できる場があるはず」と思ったことがない人はいないのではないでしょうか?と、この本には書かれています。
         皆さんが今後医師としてキャリアアップしていくには、いろいろ病院を回っていくことになります。自分の意に沿わない病院や上司のもとでの仕事になるかも知れません。それでも仕事を簡単に投げ出すことはできません。
         おそらく日常生活でも同じことが言えます。人間、いつも順風の中におられる訳ではありません。雨風が強い時、日照り続きで咲けない日、そんな時には無理に咲かなくてもいいと渡辺さんは言っておられます。その代わりに、根を下へ下へと降ろして、根を張り、次に咲く花がより大きく、美しいものとなるためだと考えなさいと書かれています。結局根がしっかりしていないと、大木には育ちません。
         私も自分の人生を振り返ってみる時、いくつかの病院を回りました。2年以上いた病院は都立府中病院、メイヨークリニック、そして南九州病院にはなんと30年近くもいたことになります。そして現在の南風病院で、今年で5年目になります。
         私の場合、幸いにも上司に恵まれたこともあって、特段大きな落ち込みは経験することもなく今日に至っております。ただ置かれた場所で、そこでできる精一杯の地道な努力はしてきたように思います。また院長になってスタッフを評価する立場になりますと、頑張っている人、努力している人の姿がよくわかるものです。皆さんも時には立場を逆にして考えることも大切かも知れませんね。人知れず地道な努力こそ大切なことかと思います。