Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

外来でのひとこま(2018/04/03) 

パーキンソン病を患ってから13年になるという78歳のこの女性、一昨年、転んで大腿骨頸部骨折になり当院で手術した。懸命にリハビリに励み見事に回復した。
 この日も杖もつかずに、歩いて診察室まで来られた。温和で落ち着いた話しぶりの女性であるが、私との付き合いは南九州病院からになる。南風病院に移ってからも、そのまま外来での通院治療を続けておられる。
 病院まではいつも82歳になるご主人は車で送ってくれている。学校の先生をされていたということで、時々診察室にも顔を出されるが、受け答えともしっかりされている。今年免許の更新の試験があるということだったが、きっとパスできるだろう。
 この日の午後は時間に余裕があったので、四方山話になる。
 「毎日の食事は誰がつくっているの」と話を向ける。「三度とも旦那がつくってくれています。味見の時には私が手伝っていますが。」「そりゃ、幸せだねえ。でもよかご主人でよかったね。なかなかいないよ」と言うと、「でも結構短気なんですよ。私がのろいからイラついているのがよく分ります。何もできないから我慢しているんですよ」「そりゃ仕方ないがね」と言うと、「しっかりしているように見えても、最近ではよく忘れるんですよ。先日もヒーターのスイッチを消すのを忘れていたんですが、忘れているよというとハラかくから、もう煮終わったんじゃないと、ストレートな表現は避けるんです」「そりゃ、いい心配りだね。それだから上手くいっているんだね。男はプライドがあるから、直接に言われると、頭にくるからね」「私には何もできないから、主人のお蔭だと思っています」と繰り替えられる。
 「先生、最近、動作がなおさらのろくなったんですけど、薬は増やせませんよね」と聞いてくる。「増やさん方がいいよ。我慢が一番。私の患者さんはもう長い付き合いの人が多いけど、みなどうにか歩いて通院できているのも、薬が少ないからだよ。調子が悪い時には、寝転がって休んでおれ、と言っている。そのうちにまたよくなるからと。患者さんからの要望に応えてそのまま薬を増やしていくと、どんどん増えていく。増えたからと言ってそんなに良くならない。副作用が出てきて、にっちもさっちもいかなくなる。まあ、程々で満足してもらうことだと思いますよ」。
 ちょっと分ってくれたような、少し不満げな表情で椅子から立ち上がり、ゆっくり診察室を出て行かれる。