老医師の仕事(3)在宅医療(2018/09/21)
「柿が色づいているよ」「まだ早いよ、匂いでわかるんだよ。柿の下に行くとその匂いがしてくるから、その時はもいでいいよ」とか細い声で話しかけられる。
ついに臨終の場面である。小堀医師の看取るやり方が自然で、家族を思いやっていることがよくわかる。
広美さんから「反応がない。呼びかけにも返事がない」という連絡がある。早速駆けつける。
「広美さん、こっちに来て。手を握ってあげてね。お父さん、最期だね」。じつに自然な形での対応である。いつも通りの終わり方で、「改まって、お世話になりました、と言われるのはおかしいしね」
小堀医師は広美さんの手を喉仏の辺りに持って行ってあげる。「かすかに動いているよ、上下するでしょう。」姪や叔父さん、叔母さんも枕元に駆けつける。「がんばったね。もうこれ以上、頑張れとは言えないよ」。
小堀医師は手を組んで立ちすくみながら眺めていたが、「最期は家族だけで」という配慮で部屋を出る。そして「今呼吸が止まりました」という連絡を受けて引き返す。「広美さんが気が付いたの。お父さん、幸せだったね。あなたに看取られて」。
広美さんが、お父さんの顔をタオルでいとおしそうに丁寧にふいている。
ちょっと熟した柿が映し出されて「今年の柿を口にすることなく、旅立ちました」というナレーションでこの項は終わった。
小堀先生は、長い外科医の時代には一人一人の患者に深く接する機会が少なかった。もともと人間に興味があり、それが現在従事している在宅医療のモチベーションになっており、毎日がフレッシュだという。
堀越医師は56歳、もともと外科医で国債医療機関で働いていたが、マザーテレサの「死を待つ家」を訪問して考えが変わり、緩和ケアと向き合うようになったという。この日訪問したのは52歳の女性で、子宮頸がんで都内の大きな病院から退院して在宅療養となった。77歳の母親が看ている。「薬飲める?」と聞くと、「吐き気が強くて飲めない」という痛みは内容で、堀越医師は病院に引き返して、この患者に合いそうな鎮吐剤を探す。細かく患者と相談しながらの在宅医療である。
私も一人一人の人生は「ナラティブ」なもので、それぞれがかけがえのない一人一人のドラマの主人公のようなものだと思っている。我々医師は患者さんとの対話によって新しい物語を創造し、会話を通して新しい意味を発生させ、患者さんの持っている問題を解決していく・・・。
人生はいくつもの小さな物語からなる大きな物語である。自分の人生の物語を語れば、自分自身の人生や意味づけもできる。人生の最後の時を共有し、その人の人生の物語を完成させることに少しでも手助けができるとしたら、老医の最後の仕事かもしれない。
ついに臨終の場面である。小堀医師の看取るやり方が自然で、家族を思いやっていることがよくわかる。
広美さんから「反応がない。呼びかけにも返事がない」という連絡がある。早速駆けつける。
「広美さん、こっちに来て。手を握ってあげてね。お父さん、最期だね」。じつに自然な形での対応である。いつも通りの終わり方で、「改まって、お世話になりました、と言われるのはおかしいしね」
小堀医師は広美さんの手を喉仏の辺りに持って行ってあげる。「かすかに動いているよ、上下するでしょう。」姪や叔父さん、叔母さんも枕元に駆けつける。「がんばったね。もうこれ以上、頑張れとは言えないよ」。
小堀医師は手を組んで立ちすくみながら眺めていたが、「最期は家族だけで」という配慮で部屋を出る。そして「今呼吸が止まりました」という連絡を受けて引き返す。「広美さんが気が付いたの。お父さん、幸せだったね。あなたに看取られて」。
広美さんが、お父さんの顔をタオルでいとおしそうに丁寧にふいている。
ちょっと熟した柿が映し出されて「今年の柿を口にすることなく、旅立ちました」というナレーションでこの項は終わった。
小堀先生は、長い外科医の時代には一人一人の患者に深く接する機会が少なかった。もともと人間に興味があり、それが現在従事している在宅医療のモチベーションになっており、毎日がフレッシュだという。
堀越医師は56歳、もともと外科医で国債医療機関で働いていたが、マザーテレサの「死を待つ家」を訪問して考えが変わり、緩和ケアと向き合うようになったという。この日訪問したのは52歳の女性で、子宮頸がんで都内の大きな病院から退院して在宅療養となった。77歳の母親が看ている。「薬飲める?」と聞くと、「吐き気が強くて飲めない」という痛みは内容で、堀越医師は病院に引き返して、この患者に合いそうな鎮吐剤を探す。細かく患者と相談しながらの在宅医療である。
私も一人一人の人生は「ナラティブ」なもので、それぞれがかけがえのない一人一人のドラマの主人公のようなものだと思っている。我々医師は患者さんとの対話によって新しい物語を創造し、会話を通して新しい意味を発生させ、患者さんの持っている問題を解決していく・・・。
人生はいくつもの小さな物語からなる大きな物語である。自分の人生の物語を語れば、自分自身の人生や意味づけもできる。人生の最後の時を共有し、その人の人生の物語を完成させることに少しでも手助けができるとしたら、老医の最後の仕事かもしれない。
