Blog前南風病院院長 福永秀敏先生の雑感

医療安全研修アドバンスコース(後)(2016/12/05) 

2事例について医療事故として医療事故調査・支援センターに報告すべきかどうか、みんなで議論した。
■ 検討事例1:40歳代男性
2013年に激しい悪寒や戦慄で救急外来受診。全身CTで主病巣はわからず、下痢もあったことから急性胃腸炎と診断。消化器内科外来を紹介され、翌日受診。発熱は速やかに改善された。しかし3年後の2016年1月、肺がん疑いで近医から呼吸器内科を紹介され、再び当院を受診した。
2013年当時、救急外来ではCT画像に問題ないと診断したが、翌日に記載された放射線科医による読影レポートでは、今回の陰影が存在する部位に、小さな結節影が指摘されており、この結節影は肺腫瘍の可能性があるとして、フォローが推奨されていた。
        呼吸器科にて精査を行ったところ、進行性肺がんと診断され、根治は困難な状態だった。2016年3月、肺がんの進行により死亡した。
■ 検討事例2:70歳代男性
2014年7月ごろから微熱が見られるようになり、2015年8月12日に不明熱のせいさ目的で入院となる。入院後の病理診断で、エンドハイム・チェスター病と診断された。
        治療開始前に胸水と心嚢液の著中を認めたので、9月28日に心嚢穿刺を行った。穿刺直後、血圧低下、意識消失が見られ、出血による心タンポナーデを疑い、心臓外科で緊急手術となった。合計4回の外科的心嚢ドレナージが行われ全身状態が安定してきたため、10月15日から、スミフェロンによる原疾患に対する治療を開始した。
10月21日、激しい嘔吐あり、直後から徐脈傾向になり心肺停止、甦生により自己心拍再開するが、心機能が低下し、重篤な腸管虚血合併症が疑われ、改善は困難と判断された。10月22日未明、多臓器不全で死亡された。
21日の嘔吐は数日来喀痰が増えてきており、吸痰する必要があったため、看護師が吸痰を行ったところ、嘔吐して誤嚥したものであった。誤嚥または窒息により、低酸素となり、心肺停止に至ったものと考えられた。
        検討事例の1,2を事故調に届けるべきかどうかは意見の分かれるところである。みなさんはどのように考えるだろうか。大方の見解としては、事例1は届け出の対象で、事例2は予期されたものとして届け出の対象にはならないのではないかという見解であった。ただこれも絶対的な目安はないわけで、TPOによっては変わっていくものと考えられる。